第937回
ユーザーの意識を刺激しないと、仕事は生まれません
私は新日鉄の八幡製鉄所に籍を置いて
新規事業の企画にあたった昭和62年の時点、
私は邱さんが描く「老齢化の流れ」に目をつけ、
そこに焦点を置いて、新しい仕事を創り出そうと
考えるようになりました。
ところで、「老齢化の進展」に目をつけて
新しい仕事を考え出そうとする場合、
「老齢化」が進む中で、
人々はどういうことを求めてくるだろうか、
ということに思いをいたすことが必要になります。
当時の私が考えたことは、
会社のOBは何もすることがなくて、
時間をもて余していて、
その傾向が今後もますます高まるのではないか
ということでした。
そこで「今月は一緒に山に登りましょう」とか
「来月はゴルフに行きましょう」
などといったサービスを
定期的に提供するクラブをつくる手があると考えました。
そして実際に、
そういうサービスを提供する会社を
つくってみたのですが、
やってみると、採算ラインに乗るほど
OBを集めることはできませんでした。
この着想は失敗でした。
この程度のサービスでは、
事業らしい事業は
起こせないことを思い知らされました。
当時のことを振り返ると、
私はお客になってくれる人のニーズを考えるより、
この事業プランなら、
社内でも反対は起こらないだろう、
大方の賛同が得られるだろうと
会社の中の意見の趨勢に
目を向けていたのです。
初めての試みに失敗し、
事業というのは、
顧客にとって魅力があるものでないと
受け入れられないことを
痛いほど思い知らされました。
邱さんはよく
「失敗するとよく覚える」とおっしゃいます。
仰るとおりです。
私はこの失敗に教えられて、
一歩前に進むことができました。
今回の「仕事づくりの知恵づくり」セミナーでは
新しい事業を誕生させるときにおちいりやすい
失敗についても勉強したいと考えています。
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