第927回
「アジアの諸国では『不動産が一番』は新しい理論」
私は香港セミナーに参加しくださった方が、
シンセンの不動産投資の物件を
手に入れようとしていることを知り
『不動産が一番』をお読みになることを推奨しました。
どうして、そんなおせっかいをしたのか、
そのわけは、
『不動産が一番』のベスト・シリーズ版で
邱さんがまえがきで、
次のようにお書きになっているからです。
「『不動産が一番』は
昭和61年から63年のはじめまで
約2年間にわたって『オール生活』誌に連載したものを、
単行本にして実業之日本社から出版したら、
たちまちベスト・セラーズの仲間入りをした。
ちょうどバブルが中盤に入って
土地ブームに火がつきはじめたこともあって、
日本国中が湧きに湧いた時だった。
そのあと土地も株も大幅に値上がりをし、
私の予想したことが見事に実現した時期もあったが、
あまりもの大暴騰に危機感を抱いた大蔵省と日銀が
総量規制にかかると、地価も株価も
逆の方向へ動くようになった。
私に言わせると、地価も株価も
あまりに上がりすぎるのはよくないが、
かと言って人為的に押さえすぎると、
経済全体に大きな悪影響を及ぼす。
だから総量規制をある程度、通り過ぎたら、
すぐに抑制策は緩めるべきだと
声を大にして主張したが、
残念ながらその意味を理解してもらえず、
とうとう戦後経験したことのない
一大不況に突入してしまった。
今日の日本からみると、
『不動産が一番』の中には
低成長の時代にはあてはまらず、
いささか見当はずれの考え方も多々見られる。
たとえばバブルの最終段階で
借金をして不動産を買った人たちは
相当な損害を蒙ったが、
意外なことに私はさほどひどい目にはあわなかった。
不動産投資の利回りが銀行金利をオーバーすると、
私は借金の返済ができなくなることをおそれて
借金を控えてしまったからである。
そのことをなぜ言ってくれなかったか、
ときかれると返事に困るが
実は『不動産が一番』という考え方は、
成熟化した日本ではそのままでは通用しなくなったが、
これから高度成長に入るアジアの諸国では
まだまだ目の醒めるような新しい理論なのである。
日本は物の輸出国から
資本の輸出国に移行しつつあるのだから、
海外投資をする場合の参考書として
充分役立つのではないかと、思いつつ
敢えてこのシリーズに加えることにしたのである。」
(ベスト・シリーズ46『不動産が一番』1997年)
私は本棚に並ぶいくつかの『不動産が一番』のうち、
この文章が書かれているベスト・シリーズ版を
香港の友人に読んでいただこうと思いました。
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