第914回
閑静な家を買ったのもチャタム・コート周辺です
若き日の邱さんの香港での活動の足跡を
探訪するツアーで、
私たちはお目当てにしていた
「漆咸圍」(チャタム・コート)を訪れました。
ここは、邱さんと奥さんとが、
新婚生活を送られた場所ですが、
邱さんは奥さんのすすめで、
この近くに新しくできたばかりの
2階建ての家を購入されています。
このときのことを描いた文章を
引用させていただきましょう。
「家内は土地の人だから、自分と結婚した以上、
これからは私もこの土地に住むものと考えている。
そのためには、
安定した収入のある家産の運用が大切であり、
何はともあれ、家賃を払って
マンションを借りているのではだめだといって、
私に不動産を買うことを盛んにすすめた。
私も月々500ドルもの家賃を払うのは
もったいないという気持ちがあったし、
自分らのマイホームとして家を買う分には
積極的に反対する理由はなかった。
ただしどういう家を買うかという段になると、
私と家内では意見が対立した。
家内は土地の事情に通じているから、
繁華街の中に3階建てか、
4階建ての小さな住居ビルを一軒買い、
自分らはその1階分に住んで
空いたところは人に貸して
家賃をもらえばいいと言った。
私は雑居ビルの上に住むのは
気がすすまなかったし、
自分は読書家だから、閑静な環境の中で
読書万巻にふけっていられるところを欲しがった。
結局、私は自分らの住んでいたマンションと
背中合わせになった
『利成新邨』(リイセイサンツウシ)という
庭付きの高級住宅の奥まった袋小路の奥にある
10号館を買った。」
(『わが青春の台湾 わが青春の香港』)
この香港でのマイホーム購入の話は、
邱さんにとって、
不動産の考え方を作り上げていく上で
大きな影響を与えたようで
『失敗の中にノウハウあり』(昭和61年)や
『不動産が一番』(昭和62年)にも
とりあげられています。
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