第850回
「『中国の実験』は開放政策理解に役に立つ本です」
前回、邱さんが1993年の時点で
エズラ・ヴォーゲル教授の
『中国の実験』が誕生するいきさつについて
お書きになった箇所を引用しましたが、
今回は、邱さんがこの本を読んだ感想について
述べておられるところを引用します。
「(『中国の実験』は)かなり分厚い本で
定価が2,900円と高かったので、
私は何回も買うのをためらった。
私のように本を旅先まで持ち歩いて読む人間にとっては
厄介な携帯品になる。
しかし、目次をめくっているうちに、
結局、この本を読むことになるのは
間違いないと思ったので、
遂に観念して旅先まで持ち歩くことになった。
読後感から先に言えば、
近年中国について書かれた数々の本の中で
出色の出来栄えであり、
今中国で起こっている開放政策を理解するうえで
大変役に立つ本である。
なかでも、野菜の市場経済化からはじまって、
魚の価格の自由化、また付加価値の高い
果物類への作付け変更といったくだりは、
中国人の頭の柔軟さをビビッドに描き出して
深く私の印象に残った。
続いてシンセン経済特区の発展ぶりが
取り上げられているが、読み進むうちに、
こりゃどうしてもシンセンに行ってみる必要がある
ということになった。
広州とか、桂林とか、海南島とか、
あるいは福州、厦門、汕頭、といった
華南一帯は一通り歩いているが、
生産事業とはしばらく縁がなかったせいで、
広州の帰りもシンセンはいつも素通りになり、
途中下車したことも一回もなかった。
広東省全体に大きな変化が起こっているのに、
その旗手ともいうべきシンセンを見なかったのは、
怠慢と言われても致し方のないことである。
そう思って、91年8月に
私の香港と台湾の部下を連れてシンセン入りをした。』
(「メシのタネはアジアに在り」
『日本脱出のすすめ』に収録)
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