第843回
「狙う株は、2年、3年の間に2つか3つ」
邱さんは
「投資コンサルタントがつとまらないわけ」
(『籠いっぱいの価値ある情報』昭和60年に収録)
というエッセイのなかで
「自分は今日に至るも
投資顧問業をやろうという気を起こしたことがない。」
と書いています。
なぜ、邱さんはそう判断したのでしょう。
前回紹介した文章に続く文章を以下に紹介します。
「というのも、レポート屋を見ていると、
月に1回とか、週に1回とか、
場合によっては、臨時の速報を盛んに出している。
その内容は日々に新たで、
常に読者の耳目を奪うものでなければ魅力がない。
ところが、株の情報は
時々刻々と変化していく面を持っているが、
経済のサイクルはひとまわりするのに
3年か4年もかかり、
その間に大きな動きは1回しかない。
毎日の売買で細かく鞘稼ぎをするのも
むろん株のやり方の一つであろうが、
私は激しく売買をして
証券会社に手数料を奉仕するよりも、
景気の一つのサイクルの間に、
できれば1回か2回、
割合に大きく値幅の投資をやれたら
という考えを持っている。
すると狙う株は、
2年、3年の間に2つか3つで、
倍にならなくとも、5割くらいあがるまでは
同じ株のことしか考えないから、
来るレポート、来るレポート
みな同じことしか書いていないのでは、
とてもレポート屋はつとまらないであろう。」
(「私に投資コンサルタントがつとまらないわけ」
『籠いっぱいの価値ある情報』に収録)
この作品を書かれたのは
昭和50年代後半のことで
そのころの経済と
今、私たちの目にうつる日本の経済や
中国の経済は、大きく異なります。
ですから、ここで書かれていることを
今、私たちが目の前にしている経済に
そのまま当てはめることはできませんが、
ただ株というのは、短期の売買ではもうからず、
チャンスを得ようとすれば少し長い目で、
つきあうほかないという考えには
大きな変化はないように思います。
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