第835回
「株式投資には原則を守り通すことが大切です」
邱さんは株に関する著作として
『株の体験』(昭和46年)
『株の発想』(昭和47年)を
発表したあと、昭和58年に
『邱永漢の株入門』を発刊しました。
私などが最初に読んだ邱さんの株の本ですが、
邱さんはこの著作を出版してから
10年ちかくたち、ちょうど
バブル崩壊がはじまった頃ですが、
“邱永漢ベストシリーズ”の一冊として再版し、
次のように評しています。
「いつの時代にも、
はじめて株を手がけようという人が現れる。
そういう人はどこに行って、
どういう具合に注文すればいいかもわからないし、
その際、どういう心掛けが必要なのかもわからない。
おそるおそる手を出し、
儲けたり損したりして少しずつ経験を積む。
私もかってそうだったし、
いまだってあの当時と気持ちの上では
そんなに変わらない。
何事も初心を忘れないことが大切であるが
株式投資についてはとりわけ
原則を守り通すことが何より大切である。
『借金をして株を買うな』
『使うあてのあるお金を株に流用するな』
『証券会社のセールスマンの言うことをきくな』と
私が初期の頃に打ち出した原則は、
今もそのまま通用するし、私自身かたくなに
それを守り続けている。
おかげでこれだけ大暴落が続いている時でも、
『ずいぶんへこんだんなあ』と
感嘆するが、恥はかかないですんでいる。
株式投資は定期預金のように
陸上を走っているわけではなく、
海の上を航海しているようなものだから、
どうしてもよく揺れる。
揺れるのをおそれて陸に逃げ帰ったのでは、
魚の大魚にめぐり合えるチャンスも永遠にない。
揺れてもシケても、安全に航海できる術を
身につける必要がある。」
(『邱永漢の株入門』邱永漢ベストシリーズ版 平成4年)
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