第745回
『女の財布』は自立する女性への経済書
邱さんは昭和52年に
『妻の財産づくり』を発表した8年後の昭和60年、
『女の財布』を発刊します。
平成3年にその文庫版を発刊しますが、
そのなかで邱さんは『女の財布』のことを
次のように書いています。
「女の一人暮しがだんだんふえてきた。
私はそうなるだろうことを30年も前に予言して
婦人雑誌に『女が一人で暮らす法』という
100枚の原稿を書こうと思って、
その準備をすすめたこともあった。
しかし、世間は女性の職場進出もやっと
という時代だったから、
早すぎて大方の共感を
得られないかもしれないと思って断念した。
どんな大きな変革も、
最初はちょっとした小さな変化からはじまる。
海に注ぐ大河ももとを辿れば、
せせらぎからはじまるようなものである。
私は女性の失地恢復は、
女性が仕事を見つけ、
ささやかな経済的独立を
確立することからはじまると思った。
女性の職場進出に反対していた私も、
(家事や育児のほかに、男のやる仕事までやれば、
過労におちいるという意味で)
女性が経済的独立を確立すれば、
両者の間のアンバランスは
自ずから変わるだろうと考えなおして、
『女の商売成功の秘訣』からはじまって、
女性が一人立ちできるような
アイデアを含んだノウハウ書を
次々と書くようになった。
女性の経済的独立が可能になれば、
どうしても離婚がふえる。
でなければ、結婚を拒否する女性が増える。
どっちにしても、一人暮しはふえるし、
結婚制度はこのままでは成り立たなくなる。
女性の物の考え方も関心事も大きく変わるから、
たとえば女の人の読む雑誌一つを取り上げても、
4大婦人雑誌みたいなものから、
『フォーカス』『フライデー』
そして『マネー』といったものに移ってしまう、
といったこと念頭に書いたのが
この『女の財布』である。
昭和58年から59年にかけて
『家庭画報』に連載し、
続けて世界文化社から単行本として出版した。
本書の社会的背景も
あの時代であることをご諒解の上、
お読みいただきたい」
(『女の財布』文庫版のためのまえがき。平成3年)
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