第741回
「浮世の風にあたって免疫をつくらせておこう」
邱さんは『妻への財産づくり』のなかで
家族の財産を守る妙法として
「家族会社」をつくることを提唱していますが、
「妻の財産づくり」の前に、
「妻の経済観念」が大切で
その教育からはじめる必要があるというのが、
邱さんの一貫した態度です。
家族会社の運営を磐石なものにしていくためにも
妻や子供にいろいろ体験させておくことが大切だと
邱さんは次のように述べておられます。
「家族会社も、その中に含まれている財産も
所詮はつくってもらったものであって、
自分でつくったものではない。
それでもつくってくれた人が生きている限りは、
陰になり日向になって
あれこれかばってくれるから、
大過なく運営することができ、
どうやら初期の目的を達することができる。
ところが、陰の人がいなくなってしまうと、
いくら百年の大計で築いてもらった城でも、
守る人が無能であれば、忽ちガタが来る。
ガタが来ないように
計画を更に遠大なものにしようと思えば、
あとに遺された人が上手に運営していけるように、
陰の人が生きているうちに
訓練をしておかなければならない。
『金づくりより経済観念の教育が先』
ということは
いつの場合もいえることなのである。
妻や子供の経済教育をやろうと思えば、
いくらでも方法がある。
株の売買を勝手にやらせるのだって、
何もやらないでボンヤリ新聞の相場欄を見ているのより
ずっと役にたつだろう。
息子を何も知らないところへ働きに出して
『他人の飯を食わせる』のも、
立派な修行であろう。
そういう免疫をつくっておかないで、
いつも代わりをつとめてやっていると、
本人たちが全権を握った時に、
浮世の冷たい風にさらされて
忽ち大病につかれてしまう。
だから、陰の人が生きている間に、
少しずつ浮世の風に当たらせて
免疫をつくっておくか、
それとも『一生、冷たい風に当たらないよう、
いかなる誘惑にも乗らないよう』遺言して、
その通り守らせるか、
どちらかに徹底する以外に方法がない。
もちろん、この二つのうち、
どちらが安全かといえば、
免疫をつくっておくことが安全にきまっている。」
(『妻の財産づくり』昭和52年』)
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