第731回
「会社の目的は幅を持たせておきましょう」
『女の商売成功の秘訣』には
「なぜ株式組織にしたほうがトクか」とか
「株式会社設立の手続きと注意」といったことも
わかりやすく書かれています。
会社を設立するとき
「目的」を明らかにする必要がありますが、
邱さんは次のように書いています。
「目的とはわかりやすくいうと、
会社がこれからやろうとする商売の種類のことです。
たとえば、喫茶店をひらきたいなら、
喫茶店の経営と書けばそれで用が足りますが、
喫茶店をやっているうちに
レストランにかわってしまうかもしれないし、
バーかスナックに変更するかもしれません。
また喫茶店を経営して金をもうけたら、
不動産を買って
アパートの経営に乗り出すかもしれません。
そういうときにいちいち目的の変更や補充をすると、
一項目につき、登記料をとられます。
ですから、あらかじめ考えられる仕事を
書き込んでおく方がよいのですが、
いくら目的を並べ立てても
一回の登記費用は同じです。
だからといって、
将来とうていやりそうもない仕事を
たくさん列挙しても仕方がありませんから、
たとえば、つぎのように書くのはいかがでしょうか。
(イ)飲食店の経営
(ロ)嗜好食品の販売製造
(ハ)不動産の売買、賃貸、管理
(ニ)有価証券の保有ならびに投資
(ホ)前各項に付帯する業務
内容にこの程度の幅をもたせておけば、
将来、金をもうけたときに
不動産を買うこともできれば、
ほかの新規事業に出資することができます」
(『女の商売成功の秘訣』昭和43年)
実は私は、この文章をある時期
何度も何度も読みました。
自分で、家族会社をつくろうと考え立ち、
ここに書かれている文章が役に立つと思ったからです。
どちらかといえば、無味乾燥になりがちなテーマでも、
邱さんが書くと、人間の温かさが伝わってきて
興味がそそられます。
おかげで、私もこの文章をお手本にして
自分の会社の目的をつくることができました。
|