第727回
「美人でないことが商売で成功する条件の一つ」
邱さんは、昭和43年に出版した
『女の商売成功の秘訣』で
「商売を始める前に知っておくべきこと」の一つとして、
「女性が商売に成功する5つの条件」
ということをとりあげています。
その一部を引用させていただきます。
「女が事業経営に成功するための
5つの条件というのをお聞きになったことがありますか。
それは次のとおりです。
(1)美人でないこと
(2)義理人情に厚いこと
(3)頭がよいこと
(4)計数に明るいこと
(5)きれい好きなこと
ある時、私がこの5つを、
美容院の経営で成功した女性に列挙してきかせたら、
『ほかの4つはそのとおりだと思うけれど、
一つ目はどうかしらね』
と反論されてしまいました。」
さて、どうして邱さんは
美人だと具合が悪いと考えたのでしょうか。
「なぜ美人が具合が悪いかというと、
まず第一に、美人であると、
人にちやほやされて、
つい自分の才能を過信してしまうからであります。
第二にすぐ男のスポンサーがつくから、
その人に運命を左右されてしまいます。
第三に、その選ぶ商売が
女相手の商売である場合は、
信頼感をもたれるよりも
嫉妬される可能性が強くなります。
だれが自分よりも格段に美しく見える女性に
髪を結ってもらおうと思うでしょうか。
その点、顔に自信のない女性は、
色気を出して商売を成功させようなどと
バカなことは考えませんから、
自分のやっていることが
すなわち実力ということになります。
人より美しく生まれているとか、
金持ちのお嬢さんに生まれてきているということは、
一見有利なように見えますが、
事業を成功させようという場合には、
かえってマイナスに働くことが多いのです。
別の見方からすれば、
おへちゃに生まれていても、資本がなくても、
少しも悲観することはないのです」
(『女の商売成功の秘訣』)
かの昔、作家の安岡章太郎さんは
邱さんの小説を評して
「あんまり本当のことをいいすぎて、
読んいる方がウンザリしてしまう」
とおっしゃったそうです。
ここに引用した一文を読むと、
安岡さんの論評に同意したくなりますが、
皆さん、いかがですか。
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