第657回
「『死ぬまで現役』が最良の健康法」
邱さんは昭和57年、
58歳のときに刊行した
『ダテに年はとらず』で
「生きている限りは『現役』でありたい」
と将来に対する人生態度を表明しましたが、
翌年の昭和58年、59歳のとき
『死に方・辞め方・別れ方』を発刊し、
この本のなかで、
「『死ぬまで現役』が最良の健康法」
という章を設けて
次のような文章を書きました。
「定年になった男が、
同じ時間に目をさまし、
つい永年の習慣で出勤しようとして、
奥さんに引き止められる話はよくきく、
今までろくに家にいなかったのが、
年中、家にゴロゴロしていて、
家族から粗大ゴミ扱いされているような
マンガにもよく接する。
60歳になってから、突如、
一家の邪魔者扱いを受けるのは、
一家の大黒柱を長くつとめてきた人間にとっては、
不本意なことであろう。
そうした扱いを受けないためには、
経済的に依然として
一家の大黒柱であることが
何よりも大切であるが、
お金だけをもっていても、
仕事がなくなると、
人間は生きていることの張り合いを失ってしまう。
だから、お金に劣らないくらい重要なことは、
おそらく、『死ぬまで現役』ということではないかと思う」
(『死に方・辞め方・別れ方』)
「死ぬまで現役」という言葉は
いまでは馴染み深い言葉になっていますが
邱さんの文章のなかで初めて登場するのは
ここに紹介した箇所だと思います。
サラリーマン生活を続けてきた人間なら
一度は必ず直面せざるを得ない問題が
描かれています。
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