第645回
「残された時間の使い方に一生懸命になる」
「万年青年のような若々しさを保つ方法は何だろう」
これが「年をとらない法」を書いたときの
邱さんの大きな関心事でしたが、20数年もたてば、
邱さんも願望する立場から
実践する立場に変わります。
そういう立場になったころに書かれた
『死ぬまで現役』で邱さんは
若さを保つ第1の条件として健康を
そして第2の条件として好奇心をあげ、
第3の条件として『残された時間』の使い方に
熱心になることを強調しています。
その部分を引用させていただきましょう。
「すでに『使ってしまった時間』にこだわるより、
『残された時間』をどう使うかについて
一生懸命になることである。
年をとると、
人間はどうしても自分の経験をもとにして
現に起こっていることを判断しようとする。
すると、釈然としないことが多くなって
『今時の若い者は』と
つい愚痴のひとつもこぼしたくなってしまう。
しかし、世の中は時代とともに
だんだん堕落するということはない。
時代が下がるにつれて、
だんだん末世になってくるということもない。
むしろそういう発想をするようになったら、
年をとった証拠であるから、
老化現象の特徴に数えられるような言動は
一切、避けるにこしたことはない。
たとえば、私が同年輩の友人たちとあって
久しぶりに話をはじめると、
それこそものの3分もしないうちに、
さっきいったことをくりかえすのを耳にする。
なるほど、老いのくりごととは
こういうことを言うのだなと、思い当たるだけに、
私は話をしていても
同じ相手に同じ話をくりかえさないように
心がけている。
また、すぐ孫自慢をはじめる人に出くわす。
これを老化現象の一つだと思うから、
孫の話は金輪際しない。
こころがけて、同じことを2回くりかえさないことと
孫の話をしないようにすると、
なんとなく自分が若返ったような気になる。
若い時のように、運動靴をはいて、
白いズボンにラケットを手にもって、
今にも走り出したい気分になってくるのである。」
(『死ぬまで現役』平成元年)
ここに記述されている
『残された時間』の使い方に熱心になろう
という考え方は「年をとらない法」でも
強調されていたものでしたね。
邱さんがこの考え方を
20数年の長きにわたって信奉し、
実践してこられたことがよくわかります。
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