第643回
「精神的に若さを保つように心がけよう」
邱さんは「年をとならない法」を発表してから
22年ばかりたち、65歳になった時に、
『死ぬまで現役』を発表しました。
この著作は邱さんの思想探求という面でも
興味をひく作品です。
この著作の「まえがき」で
邱さんは次のように書いています。
「若い人から見ると、
年寄りは昔から年をとっているように見えるが、
本人にしてみれば、はじめて年をとり、
はじめて経験することばかりだから、
年寄りは新人にすぎない。
60代の年寄りは『60代の新人』だし、
70代、80代も、それぞれ70代、80代を
はじめて経験する新人にすぎない。
20何年前、私は壮年期の人間として
老年になった時のことを予想して
『年をとらない法』を書いたが、
今は老人としての初体験をしながら、
どうやって老年期を上手に生きるか、
思案する立場におかれている。
若い時は、あんなこともやりたい、
こんなこともやりたい、と夢が膨らんだが、
一つ年をとる度に一つずつ可能性を失い、
あれもやれなかった、これもやれなかったと
夢が一つずつ凋(しぼ)んでいく。
こうなったら、夢をふくらませるより、
夢が凋(しぼ)まないように、
ブレーキをかけながら
下り坂を下りるよりほかない。
そのためには今までやってきたことを、
途中で突然やめるよりは
『死ぬまで現役』で押し通すほうがよい。
その代わり死ぬまで元気一杯で
やらなければならないから、
健康にも留意する必要があるし、
何よりも精神的に若さを保つように
心がけなければならない。」
(『死ぬまで現役』平成元年)
今から15年ばかり前に書かれた文章ですが
「年をとっても死ぬまで仕事を続け、
健康と並んでとくに精神上の若さを
保つようにしていきたい」
という生活態度が、
若い世代の人をも強くひきつける
原動力になっているのではないでしょうか。
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