第639回
「『永遠の青年』を演じることは不可能ではない」
邱さんはいつまでも若々しい感じを与えている一人として
オムロンの創業者である立石一真さんをあげ、
「年をとっても頭の柔軟な人はいる」と指摘しています。
そういう人の賢さを
私たちが学ばせていただくうえで大切なことは、
そういう方がどういう努力をされているかを
つかむことでしょう。
その点について、邱さんは
昭和42年の時点で次のように書いています。
「人間はみな持ち時間を
生きているようなものであるが、
持ち時間の多い人は
まだ使っていない時間の方に
気をとられがちである。
『若者の未来には夢がある』
などというのは、
こうした傾向のことをさすものであるが
持ち時間が少なくなってくると、
残された時間をどう使うか工夫するよりも、
すでに使ってしまった時間のことばかり
思い出すようになってくる。
こういう懐古趣味は
老人に特有のものであるが、
若い人にもたまにはある。
たとえば地方の文学青年で
名所旧跡や古書文物に異常な関心を持ちながら、
生きている人間に対しては
敵意に似たような感情をいだいているのを見かけるが、
これなどは若くして
早くも老化現象が露呈いるようなものであろう。
反対に、年をとっても
『永遠の青年』といわれる人は、
『使ってしまった時間』についてくよくよしないで、
『残された時間』をいかに使うか、
よく工夫する人のことであろう。
『青年』と『永遠の青年』の違いは、
青年には『残された時間』という観念がないのに対して、
『永遠の青年』にはそれがあることである。
それは現実に持ち時間に相違があるからである。
したがって『青年であること』は
物理的に不可能だが、
『青年のごとくあること』を
死ぬまで続けることはできるわけである。」
(「年をとらない方法」昭和42年)
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