第637回
「年をとっても頭の柔軟な人はいる」
邱さんは『期待される老人像』を描くにあたり、
いつまでも若々しい感じを与えている人の
若さの秘訣に迫ったことだと思いますが、
邱さんに「いつまでも若々しい人」
という印象を与えた一人は
オムロンの創業者の立石一真さんです。
邱さんは「年をとらない法」で
次にように書いています。
「年をとるとがんこになるとよくいわれるけれども、
年をとっても頭の柔軟な人を時々みかける。
私の知っている人の中では
たとえば立石電機(現オムロン)の社長の
立石一真さんは
そうした柔軟な頭を持った人の中でも
代表的な存在であろう。
オートメ計器などという
科学技術の最尖端をいく事業に従事しているから、
融通性が要求されるのは当然であるが、
髪も白くなっており、
風貌も年そうおうであるけれども、
ものの30分間も話をしておれば、
たちまち普通の年寄りと
話をしているのではないことに気づく」
(「年をとらない法」昭和42年)
そして邱さんは新幹線のなかで
立石さんに会ったときのことを紹介しています。
そのころ、邱さんはある人から
「頭に毛の生える薬」を持ち込まれ、
その薬をご自身の頭で実験し、
少し毛が生えて
成功のきざしが見えはじめていたので
その話を立石さんにしました。
それから4ヶ月ほどたって、
邱さんは奥さんをつれて
京都郊外にあるオムロン(当時立石電機)の
中央研究所を訪れます。
さて立石さんは邱さんが話した毛生え薬を、
研究所の社員に使用させていて
邱さんは研究所でその人の使用経過を
写真にとったものを見せられました。
立石さんから
「本人たちは抜け毛が止まった程度といっているのですが、
でも、この通り、ずいぶん目だってふえているでしょう」
(同上)といわれ、
邱さんは自分もとっていないような
データを出されびっくりしたそうです。
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