Qさんは、かつて「知恵は借り物でも知恵である」と書きました
そういうことをおっしゃる人の知恵ならいくら借りてもモンクは出ませんね

第635回
邱さんはかつて「期待される老人像」を描きました

いま若い世代の人で
邱さんに関心を持つ人がたくさんいます。
ここしばらくは、
そういう人が邱さんの
どういうところに関心を持っているのか、
私が教えていただいたことの一端を
紹介してきました。

さて邱さんが若い人から
慕われている根本的な理由は
どういうところにあるのでしょうか。
私は邱さんご自身が
1年に1歳ずつ年はとるけれど、
精神的には、できるだけ若さを
保てるようにしていこうと
つとめておられるからだと思います。

何度か紹介したことですが、
邱さんは昭和42年に
「年をとらない法」という作品を発表しました。
その頃、『期待される青年像』ということが
話題になりましたが、
邱さんはそうした風潮をもじって
『期待される老人像』を描きました。

「年をとらない法」には
邱さんが『期待される老人像』に
取り組んだ動機が書かれています。

「どんなすばらしい人生であっても、
一番確実なことは、死に至るまでの間、
一年ごとに年をとっていくことである。
だから、『年をとらない法』というテーマ自体
すこぶる矛盾に満ちた不可能なことであるが、
だれの心の中にもある願望は
そのきびしい事実の前で、
たとえわずかでも
ひきのばし作戦を展開することであろう。

それから、もうひとつは、
どうせ年をとるなら、
カッコのいい年のとり方をしたいものだ、
ということであろう。
『期待される青年像』は、
ジジイに期待される若者の在り方だから、
だれもそうなってあげましょうなんて思わないが、
『期待される老人像』は
他人に期待されるものではなくて、
自分が期待するものだから、
真剣な努力がなされて然るべきである。

私自身も俗にいう42歳の厄年あたりから、
自分の行く末について
だんだん切実に考えるようになってきた。
私の『期待される老人像』とは、
年をとった人をまだ年をとっていない目で眺めて、
もし自分ならこんな年のとり方をしたいと、
私が考えている老人の姿である」
(「年をとらない法」昭和42年)

邱さんが意識して
将来はこうありたいと思う姿を
描かれたことがよくわかります。


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