第633回
邱さんは年をとっても新しい事業を起こす
邱さんの文章を読み始めた頃
「なんか、元気なおじいさんだなぁ」
というぐらいのイメージしか持たなかった
という青年がいます。
その青年は邱さんが書く世界にひきつけられ、
邱さんが主宰する中国投資考察団に参加し
中国大陸を旅しました。
道中、邱さんの活動の様子を目の当たりにし、
「ご高齢になっても新しい事業を始めるなんて素晴らしいなあ」
という感想をもちました。
年をとれば現役の世界から身を引く人が多いなかで、
邱さんは次々と新しい事業をなさいます。
そういうことが可能なのだと
教えていただくだけでも
元気づけられることですが、
『みんな年をとる』という本には
「お金は要らないが事業は大きくしたい」
と題したエッセイがあります。
ちょっと拝見しましょう。
「事業をやる人の中には、
最初から他人のお金を利用して成功した人もある。
また私のように
自分のお金でつつましくやってきた人もある。
私は文章書きとして著名になってから
事業に手を染めるようになったので
『あなたほどの名を知られた人なら、
人のお金を集めて仕事をすればいいじゃないですか?』
と盛んに言われた。
しかし、私の名前を利用したり、
盲信したりする人が多いために、
ちょっとでもトラブルが起こると、
尻を私のところに持ち込まれることが多かった。
おそれをなして私は
ほとんどの事業を自分の資金でやってきた。
おかげで儲けても損をしても、
いちいち釈明してまわらないですんでいるが、
その代わり自己資金にはおのずから限界があるから、
株式市場からお金を集めて事業をやっている人にくらべると、
みっともないくらい小さなスケールにとどまっている。
それはそれでいいじゃないか、
他人に迷惑をかけないですんでいるし、
個人財産だって収入だって
そう見劣りしているわけじゃないんだから、
と私は自分に言いきかせてきた。
ところが、事業のスケールは拡大する一方だし、
事業欲は年をとっても一向に衰えない。
こうなったら、金銭欲とはおさらばして
事業欲だけを燃やし続けるほかない。
としたら、お金にならなくとも、
事業だけはドンドン推し進めていくよりほかない。
たまたま年齢的に私がそれを感じるようになった時期と、
私が事業の展開は中国大陸でやりたいという時期が
重なってしまったので、
私の事業展開はどうやら集団でやるほかない」
(『みんな年をとる』平成5年)
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