第632回
「新しいアイデアは次から次へと湧いてくる」
邱さんは自分が思いついた考えを
人にも気前よく伝える理由として
次のようにも書いておられます。
「もう一つ、私がお金の儲かる情報を
平気で人に教えるのは、
人が私の真似をすることを怖れないからである。
まず世の中に独占ということはあり得ない。
人が私に教えられて
私の競争相手になったとしても、
市場はもともと一人で独占できるものではないし、
人それぞれのお客があるから、
それぞれの商売の仕方がある。
たとえば、
私がビジネスホテルというものを考えついて、
誰にも口外せずに自分でこっそりやったとしても、
商売が繁盛し始めたら、
真似をして同じ商売を始める人はいくらでも出てくる。
その人のほうが積極的で有能で
次々と店をつくり、そのあおりを食って
こちらの旗色が悪くなったとしても、
それはこちらが無能だからであって、
向こうが悪いせいではない。
現に私は一軒目のビジネスホテルをつくり、
二軒目のビジネスホテルをつくるチャンスは
いくらでもあったが、つくらなかった。
代わりに『ビジネスホテルの経営講座』に出て、
どうすればビジネスホテルを
うまく経営できるかについて講釈をした。
それは私が新しいアイデアを実行したり、
テスト・プラントをつくったりするのには
興味を持っているが、
本物の商人ではないからであろう。
私としては
うまく実験に成功すればそれで十分満足であり、
他人がそれを実行に移して
うんと成果をあげても一向に構わない。
私としてはまた次のことを考えればいいことだし、
新しいアイデアは
次から次へといくらでも湧いてくる」
(『77歳で私は死にたい』平成5年)
なるほど、アイデアが枯渇しないんですね。
私たちも、どんどんアイデアがわいてきて
人にそれをふるまえるような境地を
開拓したいものですね。
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