第615回
「株は水面に潜っても、いつかまた浮上してくる生き物」
私たちが株を買うとき、
買値の2割や3割程度も株価が上がれば、
うれしいとか言ったりしますが、
邱さんが株について書いた作品を読むと、
買った株が2倍になったとか、
3倍になったといった話しが出てきます。
その辺が邱さんが
株について書いている文章の
一つの特徴だと思いますが、
次にご紹介する文章には、
持株を2倍とか3倍にする秘訣が書かれています。
「人間は誰でも、損をすれば痛いと思う。
だから自分の買い値を割ったら、泣き泣き辛抱する。
商売の時でもそうだが、
こういう雌伏期がその人の精神の鍛錬をする。
長い長い冬ごもりの時期がすぎて、
やがて雪解けの季節がくる。
辛抱の時期が長かっただけに、
株価が上がって、自分の買い値をオーバーし、
もうここで売っても損をしないことがわかると、
長い刑期があけたように、
あわてて株を売る人がある。
そこから新しい相場が始まって
倍にも3倍にも株価がはね上がるようなことが起こる。
そういう目に遭って地団太を踏んだ経験の持ち主は、
1人や2人ではないはずである。
相場のケイ線をみると、
株価はだいたい、そういう動きになっている。
辛抱しきれずに売るのは、損にはなるが、
早く上がりそうな株に乗り換えるのなら、
そう悔しがらずにすむ。
そうした苦節の時期をすぎて、
上がりバナを売ったのでは
泣いても泣ききれない。
だから下げた時もジッとガマンをした人なら、
自分の買い値に戻したら、
それからがガマンのしどころである。
下げる時もガマンなら、上がる時もガマンである。
2年も3年も、定期預金をしているほどの人なら、
こうしたガマンができないことはないだろう。
それができれば、
そもそも株で損をすることはまずめったにない。
水面に潜っても、
いつかまた必ず水面に顔を出すのが
株という生き物の習性だからである。」
『シルバーグレーの金銭学』
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