第609回
「クイズに参加しないと生きている気がしない」
邱さんはときどき株の話をしてくれますが、
邱さんの株の話には、
ほかの人間にはちょっとマネのできない
独特の見方があります。
それが魅力で邱さんの株の話に聞き耳を立てる人が
たくさんいらっしゃいますが、
『デフレに強い知的金銭生活』を読むと、
株に興味をよせる
ご自身の関心のありかがよくわかります。
「年寄りにお金を使う話をもちかけても
大抵乗ってくれない。(中略)
しかし、お金を使う話には乗らない人でも、
お金をふやす話になると、
思わず膝を乗り出してくる。
よく老人が金銭上のトラブルにまき込まれて
詐欺にあったり生命をおとしたりするのは、
ほとんどが欲の皮を突っ張らせて
膝を乗り出した結果と見てよいだろう。
現に私だってもうお金は要らない。
これからお金を儲けても使うところがない。
そうとわかっていても、
新しい有望な事業があると
またやろうかという気を起こすし、
有望な株が目につくと、
すぐに株屋に電話をかけてしまう。
お金が欲しくてたまらないわけでもないのに、
クイズに参加しないと
生きている気がしなくなってしまう。
そういうのを、『欲が深い』とか
『因業だ』とかいっても間違いではないが、
『退屈しのぎのお遊び』と見ても
いいのではないだろうか。(中略)
そういう意味でも
最も老人向きのエンターテイメントは
何といっても株式投資であろう。
麻雀にも賭けがあるし、競馬にも賭けがある。
ゴルフにもチョコレート以上の賭けが行われている。
生まれつき賭けに強い人もあれば、弱い人もある。
しかし、賭けにも運不運がつきもので、
人間の能力ではどうにもならない面が大きい。
もちろん株式投資にも
そうした面がないとは言えないが、
予期しないことが起こることも
株式投資の条件の一つだから、
それも勘定に入れた
理詰めのゲームであると言ってもよいだろう。」
(『デフレに強い知的金銭生活』)
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