第607回
「株は知的なマネー・ゲームです」
『株は魔術師』の中で邱さんは
日本人の生活が豊かになるにつれ
競馬や競輪にお金を投じる人が減少し、
株に魅力を感じる人が
増えてきていると書いています。
「日本人のふところ具合がよくなると、
ある一定の水準から、
競馬や競輪や競艇に賭けるお金が減りはじめた。
競馬はまだ王様のレースという伝統があるから、
一定のところにとどまっているが、
競輪や競艇は急速に下降の一途をたどっている。
やはりお金を持ちつけない人の
お金をまきあげる商売が競輪、競艇である、
日本人がお金を持ちつけるようになると、
計算高くなった人から
見放されるようになったのであろう。
かわりに人々を惹きつけるようになったのが株であるが、
株は競輪、競艇に比していくつかの長所を持っている。」
といって邱さんはまず株には、
競馬や競輪のような上納金はないことを挙げています。
平成16年のいま、株の売買にかかるコストは
証券会社に支払う委託手数料と、
売却益に対して所得税と住民税の合計で
一律10%の税金です。
競馬や競輪の場合の25%は
購入額全体にかかってくるに対し、
株の場合は売却益に対する10%ですから
株の売買の方が
負担させられるコストは
かなり低いといえるでしょう。
このほか邱さんは株の長所として
次の二つのことを述べています。
1.「株は上場した企業の財産が
業績を反映したものであるから、
会社が倒産でもしないかぎり、
ある日、突然、無価値になってしまう心配がない。
それどころか、内容のしっかりした一流企業があれば、
それ自身が財産を表示しているようなものだから、
いつでも換金できるし、
財産として安心して保持することができる。」
2.「株価も、水の上に浮いた船のように
絶えず経済の動きに左右されるが、
この上げ下げは全く想像を絶するような
突拍子もないものではない。
予見できないような意外性のある動きがあるにしても、
それは起こるべくして起こることだから、
人智の支配する範囲内で起こる出来事である。
したがって株価を予想するゲームは知的ゲームである、
お金のある人にも、インテリジェンスのある人にも
喜んで参加してもらえるマネー・ゲームとしての要素を
備えている。」
(いずれも『株は魔術師』平成元年)
このように邱さんは株と競輪や競馬との間に一線をひき
株式投資は知的な推理力が要求されるゲームであると
評価しています。
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