第598回
「芸術も事業も同じです」
邱さんは『野心家の時間割』のなかで
「夢中にならないと成功できないのは
事業でも芸術でも同じだ」と、
次のように書いています。
「何ごとも夢中にならないと成功できないことは、
芸術も発明もお金儲けも皆同じである。
よく芸術青年の中には芸術的な情熱を、
事業的情熱と区別して、
お金儲けを卑しんだりする人もあるが、
世俗的な仕事の方がランクが下ということはない。
むしろ多くの人たちに職を与え、飯を食わせ、
チャンスを与えるという意味では、
テレビの工場をつくったり、
スーパーやテレビのチェーン店を作ったほうが
広く世間に功徳を施したことになるだろう。
その代わり金銭的に報いられる面もあるから、
本人が生きている間は勢いがよいが、
事業に失敗するか、
死んでしまったりすると、
たちまち忘れられてしまう。
その点、芸術的な仕事は、
個人作業に属するものが多く、
孤独な仕事で、生きている間
金銭的に恵まれないことも多い。
それでもなお情熱を打ち込む人が多いのは、
『創る』ということに
人の心をとらえて離さない魅力があるからであろう。
魅せられるということ自体が
既に溺れることであり、
恍惚に世界に遊ぶことであるから、
改めて金銭的に報いられるかどうかは、
さほど問題ではない。
しかし、金銭に拘泥しない人でも、
『人に認められる』とか『有名になる』とか、
『勲章をもらう』ことには執着する。
どうしてかというと、
芸術とは一人よがりの作業ではなくて、
人の共感や感動を呼ぶことが条件になっており、
どの芸術家も自己顕示欲のない人はいないからである」
(『野心家の時間割』)
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