第586回
株のシロウトの邱さんが“神様”になりました
邱さんが先頭を切って走り、
そのあと人がついてきて
走るようになった例として
外国人としてはじめて
日本の文学賞を獲得したことが頭に浮かびますが、
今回は成長株を引っさげて兜町に登場し、
『神様、仏様、邱永漢様』と
経済雑誌にひやかされるようになったことを
とりあげましょう。
平成2年に出版された『金儲け発想の原点』から
この頃のことにふれる箇所を引用させていただきます。
「昭和35年の11月から約半年、
私は『週刊公論』という短命に終った週刊誌で
『会社拝見』という連載をした。
株のことを週刊誌に書く習慣のない時代であったから、
私の連載は投資家たちの間で一大旋風をまき起こした。
というのは、
私がある会社のことを書くと、
発売日にその株がストップ高をするという珍現象が
続いたからである。
連載が終ると、これも珍しいことだが、
何と株とは縁もゆかりもない角川書店から
『投資家のための会社拝見』と題して出版された。
今、その本を覗いてみると
『オリンピック産業の本命、佐藤工業株式会社』
『好況を呼ぶ虹のかけ橋、株式会社宮地鉄工所』
といった記事が載っている」
(『金儲け発想の原点』平成2年)
この記事が雑誌に掲載されると、
ストップ高を記録したりと、
株式市場に異変が起こり、邱さん自身
自分が推奨する株を買っていたこともあって
思わぬ恩恵にあずかることになり
友人から借りた200万円ではじめた株式投資が
一年という短い期間の間に
なんと5000万円、25倍にも膨れ上がり、
その結果、小ぶりながらも
ビルを手に入れたというからたいへんなものです。
何回きいても胸がスーとする快挙です。
もっとも、邱さんを金持ちにした「成長株」理論も、
その後みなに知れ渡ると、常識化し、
邱さんが引っさげて登場した頃に持っていたような力は
なくなったそうです。
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