第580回
「前人未到の世界に挑戦する気構え」が活動の源泉
前回、ご紹介した
「年をとる」ことの意味を追求した
邱さんの文章の引用を
続けさせていただきます。
「昔の年寄りも実は
年寄りとしては『新人』だったから、
偉そうなことを述べているように見えても、
実は新入社員が大学生に『会社勤めというものは』
と説教するのとあまり変わりはないのである。
社員としての何十年の体験を積んだ課長や部長がきいたら、
おかしさをこらえるのに
苦労するような程度の説教であろう。
こういうアングルから物を見ると、
課長や部長だって、
平社員としてはベテランであるかもしれないが、
課長や部長としては
まだホンの駆け出しだから、
課長談話や部長談話を
『新人』の部課長の抱負としてきくことは
さしつかえないが、
経験者としての意見と思ったら、
とんだ検討違いということになる。
新人部課長と新入社員で
『大体、こんなことだろう』と云って
手さぐりでやっているのが会社の仕事だから、
それで大過なきを得ているだけでも
大したものだということになる。
人間はいくつになっても新入りであり、
未知の人生をこれから体験しようとする駆け出しに
過ぎないのである」
(「人生はもう一度というわけにはまいらない」
(『ダテに年をとらず』昭和62年出版に収録)
このデンで行けば
過去に生きた人の書は
たくさんあるけれども、
生きてきた環境も大きく違うので
そのままでは役に立たないということでしょうか、
邱さんは次のように書いています。
「だからいくら万巻の書があり、
幾千万人の先輩がいても、
自分の人生は自分なりに
白紙に新しく絵を描いて行くようなものであって、
しかも書き直しがきかないことに変わりがないのである。
旺盛な好奇心と前人未到の世界に挑戦する気構え以外に
この人生を悔いなく生きる方法はなさそうに思える」
この文章を書いたときの邱さんは63歳でしたが
それからから17年の年月が経ち、
邱さんは80歳を迎えられます。
これからどんなメッセージを送ってくださるか
とても楽しみです。
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