第549回
邱作品の話をネタにして会話が発展します
ネットオークションを経営する原さんから
「自分がはじめて読んだ邱さんの本は
『邱永漢サラリーマン出門』ではないか」
との返事をいただき、
私は私でこの本には忘れられない思い出があり、
そうした互いの思い出を語り合いながら
生まれたときも、育った環境もまったく違う人間が、
交流を深められることは面白いと思い、
私はまた原さんにメールを送りました。
「早速にお返事をいただきましてありがとうございました。
行きつけの歯医者さんでご覧になられたのが、
『邱永漢サラリーマン出門』ではないかとのことですね。
この本は独立・自営の生き方を推奨する本です。
私はこの本に接するまで、
同じ会社でずっと働き続けることを
思い描きながら働いていましたから、
この本はそうした生き方に抵触します。
が一方、サラリーマンは、
いずれ退場を強いられるわけで
退場したくないと思えば“出門”しなければならず、
自分の心のなかで葛藤しながら読んだ本です。
その後、自分がやってきたことをふりかえると
自分の人生開拓によい影響を受けた本だと思い、
昨年の6月ごろ、『良薬は口に苦し』と、
この『サラリーマン出門』のことを
“お知恵拝借”で書きました。
このように、私にとっては思い出の深い邱さんの著作を
原さんは高校時代にお読みになり、
また実際生活のなかでも、
原さんはサラリーマンを“出門”し、
社長業に入られご活躍なさっておられ、
素晴らしいことです。
ところで、この機会に
『サラリーマン出門』を手にとってみましたが、
この本は、
“個人レベルでやれる仕事としてどんな商売が可能か”
について書かれていて、
邱さんの個人としてのヒストリーは
ほとんどふれられていません。
そういう意味で
『邱永漢さんが東大に行っても
外国人だから普通の仕事には就けないと書かれていたこと
とても印象に残っています』
というのは、多分、邱さんの別の著作、
たとえば『私の金儲け自伝』といった本をお読みになられ
邱さんがたどってきた道に触れ、
そのとき得た知識が原さんの脳裏に
いまも残っているということではないでしょうか。
まあそういうことはどうでもいいことですが、
邱さんの作品は原さんのように
事業経営にいそしまれる方々に愛読されています。
自分で会社を経営されている人たちにとって
有益なヒントを提供しているからでしょうね。」
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