第296回
独立をめざす青年たちに向けた『サラリーマン出門』
私は30代前半まで、
独立自営の道を歩むといったことを
考えたことはありませんでした。
“独立自営”はオヤジやオフクロの世界の話であって、
私はもっぱら組織の中で生きることを考えていました。
しかし、妻は私より少し先を走っていたようです。
私は30代のはじめ、土日に関係なく
会社の仕事に取り組んでいましたが、
そんな私を見ていて妻は、
うちの旦那は働き者だけど、何しろ給料が安い。
土日も働いているといっても、
ちゃんと休養をとっている隣のご主人と比べて
特別、給料が高いわけではない。
幸い働くことは好きなようだから、
サラリーマンの生活から足を洗って、
商売人になってもらった方がいいのじゃないか
と思ったそうです。
思うだけでなく、私にそう言ったと妻はいうのですが、
私は妻からのそうしたアドバイスを受けた記憶がありません。
ハナから妻からのアドバイスを受けつけなかったのでしょう。
日本の会社には、給料が安くても社員をして
仕事に向かわせるものがあるということでしょうか。
ただ、そんな私も、30代半ばになり、
サラリーマンの人生は後半が大変だと気づくようになった頃に、
邱さんから
「会社に“就職”でなく “就社” した人が、
第二の人生を選択する場合、
自分の技を生かす道に苦労する。
一般のサラリーマンは、
会社の組織の中で働いているだけで、
一人で放り出されては何もできない、
という人がいかに多いか。」
などと言われ、自分のなかに潜在していた弱点に
気づくことになりました。
そこで古本屋さんに行って
『サラリーマン出門』を探してきて、
熱心に読みましたが、
この本は、私にとっては読み続けることが
苦痛に感じられる本でした。
邱さんのほかの本はスラスラ読め、面白いと感じるのに
この『サラリーマン出門』ばかりは、抵抗感が働いて
スーッと読めるという感じではありません。
私自身の気持ちの中に会社で仕事を続けていたら
将来何とかなるのではないかという甘え心があったのと、
仮に独立するといって具体的にどんな道を歩めばいいのか
見えてこなかったからでしょう。
しかし、良薬は口に苦しですね。
苦吟しながら、『サラリーマン出門』を読んだ結果、
私は同じ会社の中のことですが、
経験したことのない分野で仕事をしようと、
社内転職のコースを選ぶことになり、
7,8年後には、会社の看板をはずしても
やっていけるのではないかという気持ちになり、
実際に、会社の外に飛び出すことになりましたから。
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