第521回
「特殊技能が身につけば老後の心配など問題にならない」
生きている時間が短く感じられるような人生が
よい人生だという邱さんは
仕事についても、
かけた時間を短く感じることができれば
仕事を楽しんでいる状態だといいます。
そのため元来が
「時間売り」になっているサラリーマンも、
仕事が面白く感じられるような努力が必要で、
仕事を進めるうえで必要とされる部下との人間関係や
仕事に必要な技能に磨きをかければ、
その人に固有の“ソフト財産”ができ、
年をとってからの心配をしなくても
やっていけるのではないかと述べています。
邱さんの意見を拝聴しましょう。
「私の友人の中には、
いつもピーピーしているが、
公私の区別がはっきりしていて、
金離れが鮮やかなので、
部下から尊敬されている人がある。
そういう人は部下そのものを財産だと思っているし、
また自分の人気が生き甲斐だと思っている。
『一生懸命、貯金に励んでも、
サラリーをもらっていては、
一生かかっても5000万円とたまらないでしょう。
それならば、
血となり肉となることにお金を使った方がいいと
割り切っているのですよ』
なるほど、そういわれてみれば、
3000万円か、5000万円のお金のために
やりたいこともやらず、
食べたい物も食べずに、節約をしても
大して値打ちがあるとも思われない。
組織のなかにいて、
常に自分の生き甲斐を捜し求める人は
一生かかって貯められるお金と、
そのお金を貯める代わりに、
使って得られるかもしれない心の満足を両天秤にかけて、
どちらか重いものをとるべきであろう。
そのためには貯金をあるていど、
犠牲にしてもやむを得ないが、
その金額と同じだけの、
何か代わりの役割をはたしてくれるものを
見つけることさえできれば、
別にさしつかえない。
現に、退職金もあって、厚生年金もあれば、
なんとか食べていけるし、
そんなお金のことよりも、
多くの友人に支えられているとか、
特殊技能が身についていて、
退職したあとも引くてあまたということになれば、
老後の心配などあまり問題にしなくともよいからである。」
(『貧しからず 富に溺れず』)
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