第513回
「一生の仕事」選びはチャンスが得られる方向に進もう
邱さんの「厄年」についての考えをうかがってきました。
このコラムをお読みいただいている人には
30歳前後の方が多いと思います。
そうした年齢の方で、いまの職業に疑問が生じ、
「一生の仕事」になるものを選びたいと感じている人たちが
少なくないと思います。
そういう人たちに対し
邱さんは、どういう方向に進んだらいいかについて
次のようなアドバイスを送っています。
「第一にいえることは、
これから陽の当たる分野に位置している業種に
丁稚奉公に行くべきであって、
斜陽化のきびしい仕事に突っ込んではいけない
ということである。
たとえば、今ならコンピュータ関連とか、
バイオテクノロジー関連の企業に奉職すれば、
門前の小僧をつとめただけで、
先端産業の匂いを嗅ぐことができるだろう。
反対に、船とか繊維とか、
斜陽の色濃い分野で
フレッシュマンの仕事をしたら、
うしろ向きの対策に追われている人たちの
うしろの姿ばかり拝するようになって、
すべて同じ節穴から
世間の動きを見る一生になってしまうであろう。
第二は大企業に就職しないことである。
大企業は『過去において偉大な仕事を成しとげた企業』
のことであって、
だからこそ大きな企業になったのであろうが、
実績が誰の目にも見えるようになると、
やがて組織も活力を失うようになるし、
安定を望んで生活のよりどころにしようとする凡人が
より集まってくるから、
過去になしとげた偉業を
将来においても繰りひろげて行く保証はない。
何よりも問題は、
組織が大きくなりすぎると
社員の一人一人が
自分の位置から全体を見ることができなくなり、
全貌をつかまえられなくなることである。
独立して仕事をする人は、
小さくても魚の頭から尻っ尾まで、
まるごと一匹の料理法を覚えなければならない。
ところが、大企業に勤めると、
切り身で刺身をつくったり、
料理をすることしか教わる機会がないから、
職人にはなれても店のオヤジはつとまらなくなる。
だから将来、独立を志している人は、
なるべく中小企業の、
それも先端産業に属する企業に入社すれば、
かえってチャンスは多いのである。」
(『貧しからず 富に溺れず』)
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