第504回
「途中下車、前途無効をためらうな」
30歳前後で、自分の職業に疑問を感じだし
この先どうしようかと考える人たちに
邱さんが送るエールは
「途中下車、前途無効をためらうな」です。
私たちのように高度成長期に
会社に勤めをするようになった人間の多くは、
「会社は一生を託すところ」で、
「途中下車」に踏み切るような人は
少なかったと思います。
ですが、邱さんは昭和45年のとき
『サラリーマン出門』という本を出していて、
昭和60年に出版した『貧しからず 富に溺れず』では
「途中下車をためらう人は少なくなっていく」
と予見しています。
以下、この本からの引用です。
「職業に迷いが出た場合の『途中下車』も、
豊かな世の中になれば
さして再就職に困らなくなったから、
昔に比べてずっと多くなった。
ときに、今の30歳は、私の若い頃の30歳に比べて
生活に対する不安感はないから、
一流企業に就職した者でも
平気で『途中下車』をしてしまう。
人減らしになって
ちょうどよいと思う大企業にとっては
あまり問題はないが、
『中途採用』をかたくなに拒否し続けていると、
そのうちに大企業自体は
人材不足におちいることも考えられる。」
「途中下車、再出発というのは、
就職戦線においても、家庭においても、
爆発的な勢いで進行しつつあるのである。
学校に出たての時に選んだ職業(というより会社)が
一生の仕事になることは、
もちろん、望ましいことであるし、
また初婚で一緒になった相手と
偕老同穴の生活を貫くことは
今後といえども、同じように望ましいことであろう。
おそらくそのための努力は今後も続けられるだろう。
しかし、『途中下車』を選ぶ人生に
ためらいを感ずる人は
いよいよ少なくなることは間違いない。」
邱さんは20年前に
こういう大胆な予見をされていたんだなあ
とビックリしてしまいますが、
いまあらためてこれらの文章を読むと、
日本のサラリーマンの就職や転職についての意識が、
邱さんが予見したような方向に
変わっていることに気づきます。
私たちが社会人になったときには
存在しなかった転職雑誌は、
いまでは社会になくてならない媒体になっています。
また特定の会社に属さないで、
仕事をしていくフリーターの人たちが多くなってきたのも、
できるだけ自由な形で仕事をしていきたいという
若い人たちの意識の反映なんでしょうね。
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