第503回
「30代のはじめに
自分の職業について考えることは無駄ではない」
昨年人生設計セミナーを開いた時、
集まってくださった人たちで一番多かった年代は
30歳を少し過ぎたころの人たちで、
彼らの多くは
「今のままの仕事を続けていっていいのだろうか」
という悩みを持っておられるように見受けました。
邱さんが20年ほど前に
サラリーマンに焦点をあわせて書いた
『貧しからず 富に溺れず』を再読すると、
いま30歳前後の人たちが抱えている心の迷いが活写され、
自分の仕事のことを考えることは無駄ではないですよ、
とおっしゃっています。
以下、『貧しからず 富に溺れず』からの引用です。
「仮に保険業務に興味を持っており、
東京海上が待遇のよい企業であることも熟知しており、
それを第一志望として
入社試験を受けて見事に合格したとしても、
晴れてエリート・コースを歩み、
そのまま順調に定年まで勤めるようになるとは限らない。
それがおぼろげながら気になりはじめるのが
入社5,6年であり、
俗に『7年目の浮気』というコトバもあるように、
入社7年目くらいになると絶頂に達する。
その時期がちょうど30歳であるから、
30歳はまさにトンネルの闇の中といってよいのである。
では30歳になる前に、
たとえば23歳で職を見つける時に、
30歳になってから迷わないですむような予防措置が
可能であろうか。
私はその方法はほとんどないのではないかと思う。
ちょうど新幹線に乗った人がいて、
どのあたりにきたらトンネルがあるとわかっていても、
トンネルをとおらないで終着駅に着けないのと
同じようなものだからである。
しかしトンネルがそこにあって、
そこはどんなトンネルなのかを予め知って
トンネルをとおることは予想のコースであるから
苦痛をあるていど軽減することはできるだろう。
その意味では30歳の厄は
明らかに職業にかかわるものである。
自分が選んだ職業が
はたして一生の職業たりうるかどうかを、
30代のはじめに真剣に考えることは
決して無駄なことではないと思う。」
(『貧しからず 富に溺れず』)
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