第502回
「30歳前後で自分の職業に疑問を感じるようになります」
邱さんによれば、
人は年をとっていく過程で、
何度か迷いの叢に踏み込んでいくもので
最初の迷いは30歳前後になったころに
やってくるとのことです。
『貧しからず 富に溺れず』で
このことにふれる文章を追っていきましょう。
「社会のことについて
何も知らないままに就職した人でも、
3年、5年たつうちに
だんだん世の中の仕組みが
どんな具合にできているかわかってくる。
一流企業というとカッコはよいが、
会社で実際にやらされていることは、
新聞の切抜きをしたり、
きた手紙の整理をすることであったりする。
ガソリンの給油をしたり、
荷物の配達であったりする。」
そういうことがわかってくると、
次第に自分の職業について迷いが生じてきます。
『貧しからず 富に溺れず』の引用を
続けさせていただきます。
「ひょっとしたら、
自分は職業の選択を誤ったのではないか、
自分のような人間は、いっそ会社をやめて
ラーメン屋か、スパゲティー屋にでもなった方が
まだ向いているのではなかろうか、
といったような気持ちに傾く時がいつか訪れる。
27歳で来なくても、35歳までにはやって来る。
要するに30歳前後になると、
自分の職業に疑問を抱くようになり、
会社をやめたものかどうか迷いに迷う時がくる。」
「そうした『迷いの季節』は厄年と呼ばれ、
フツーは厄年が過ぎると、
思い患っていたことをケロリと忘れて、
『職業への疑問』は一応不問に附されてしまう。
曲がり角を曲がっても、また曲がらずに、
結局、一本道を歩くが、
そうでない道を歩んだらどうなったか
という体験は積んでいないから、
後悔はそれほど深刻ではない。」
(『貧しからず 富に溺れず』)
ちなみに「厄年」を辞書で引いてみると
「人間の一生中、厄難(災害。災い)であるから
慎むべきであるとする数えの年齢。
男性は25・42・60、女性は19・33、
特に42・33を大厄とする」(「新潮国語辞典」)
と出ています。
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