第480回
集中投資で邱さんを感心させる人もいます
邱さんが持株の診断をたのまれた時の応対を
前回紹介しましたが、今回もその続きです。
「『でもあんまり多くなると、
どれがどうなっているか
わからなくなってしまうでしょう。
誰でも一人の相手と暮らしていると、
相手の癖もよく心得るようになるし、
今日はご機嫌がいいのか、虫の居所が悪いのか、
今日はこんな話を持ち出してよいのかどうかも
わかるようになるでしょう。
それと同じように、持株に精通しようと思えば、
銘柄をしぼって頭に入りきれる範囲に
とどめておいたほうがいいですよ』
『本当にそうですね。ぜひそうしましょう』
といかにもわかりのよいような応対をしているが、
一人になってそれを実行に移すことのできる人は
そうたくさんはいない。
だから持株リストを見せ付けられて、
銘柄が3つか4つだけに限られ、
しかも一銘柄あたりの持株数の多い人は、
株式投資のベテランであり、
おそらく投資の成績も
よい人である人であると見てよいだろう。」
(『株は魔術師』)
以上は邱さんにため息をつかせた人の例ですが、
まれに邱さんを感心させる人もいるようです。
邱さんが今から約30年前に刊行した作品に
『株の発想』(昭和47年)があります。
この本が出版される2年前に
『株の体験』(昭和45年)が刊行されたのですが、
この『株の体験』を読み、
証券会社のセールスマン頼みだった自分の非に気づき
青森から電車に乗って
邱さんのところに駆けつけてきた
お年寄りがいました。
『株の発想』に載っている話なのですが、
このお年寄りに対して邱さんは
好意をもって接しているのです。
というのは、100万円たらずの投資額でも、
10銘柄にも持株を分散している人が多いなかで
この老人が4つの銘柄に10万株単位で投資する
という集中投資の態度をとっていたからです。
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