第473回
「株に成功するための最大の条件は
　自分との戦いに勝つことです」

邱さんは
「株式投資はまたとない精神修養の場である」
とおっしゃいました。
また「株の儲けの80％はガマン料です」
ともおっしゃいました。
そうした心境に達するためには
「不在地主のような心がけで株と接するのがいい」
という方法論も提供してくださいました。

いずれも、株で儲けるためには、
自分のやりたいことは押さえ、
自分がやりたくないことを
思い切ってやるだけの精神力が要求される
ということを伝える言葉です。
「言葉の魔術師」邱さんは
この人間心理の真実を『株は魔術師』で
次のように表現しています。

「株に成功するための最大の条件は
自分との戦いに勝つことであり、
自分でやりたいことをやらず、
やりたくないことをやるように、
克己心を働かせることである。
それができない人は、
株が上がりはじめると、
自分だけ乗り遅れるのではないか、
とあわててとびつき買いをするし、
ちょっとでも上がると、
また下がるのではないかと心配になって
すぐ売ってしまう。

逆に下がりはじめると、
もっと下がるのではないかと恐怖心にかられて、
暴落のさなかで叩き売ってしまったりする。
株で儲けようと思えば、
今あげたようなことと
ちょうど逆のことをやらなければならない。
すなわち暴落のさなかか、さもなければ、
下げに下げて皆が見離してしまったところから
安値を拾わなければならないし、
新聞の社会面に取引所の写真などが載って
ダウ平均は市場最高と報じられた時には、
『ダウは３万円になりますよ』といわれても、
持株を少しずつでもはずしていく。

また自分の持株がやっと暗いトンネルを抜けて
明るい空が見えた途端に、
そこで欣喜雀躍してぶん投げるんではなくて、
これから長い旅がはじまるのだと
心を引き締めて株を持続する。

これらすべての行為は、
人間が心の赴くままにやりたいことに反するから、
心にブレーキがかからなければ
とてもできないことである。
しかしできなければ、
成功できないのだから、
自分がやりたくないことや
やれそうもないことをやろうと思えば、
まず念仏でも唱えるように、
自分自身に言い聞かせるよりほかないのである。」
（『株は魔術師』平成元年）