第472回
「株は不在地主のような心がけで接するのがいい」
昭和62年から平成元年にかけて連載した文章をまとめた本に
『邱永漢のシルバーグレーの金銭学』という本があります。
この連載には
「買ったあとは忘れているくらいでちょうどいい」
というタイトルの文章があります。
「株式投資はもともと投機のことであって、
うまく立ち回れば、
一攫千金も夢じゃないと軽く考える人がある。
が、なかなかどうして、
正確な情報を振り分ける判断力も必要だが、
株式投資に本当に要求されるものは、
目的を達成するまで耐え抜く忍耐力である。
もし正確な判断を下し、
間違いのない銘柄を選ぶことに
全精力の20%を使ったとしたら、
それから先、
あらゆる障害や誘惑を乗り越えて行くために
消耗する精力は80%くらいだといっても
決して誇張しすぎたことにはならないだろう。
そういう環境に自分を置いてなおかつ
『しばらく忘れてほおっておく』ことができれば、
もとより一人前だが、
なるべくそうできるように
自分を訓練することが大切である。
多分、そのためには
他に心をうばわれるような趣味とか仕事をもっていて、
株については不在地主のような心がけで接するようになれば、
辛抱する間がしのぎやすいのではないかと思う」
(『邱永漢のシルバーグレーの金銭学』)
私はこの文章を読んで、なるほどと
深く納得するところがありましたが、同時に
「株は不在地主のような心がけで接するのがいい」なんて、
こんな言葉、よく出てくるもんだと感心しました。
ご紹介しているように、
邱さんが株のことについて書いた著作に
『株は魔術師』という本がありますが、
「邱さんは言葉の魔術師」と言ってもいいのではないか
と思ったことでした。
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