第470回
「株式投資はまたとない精神修養の場である」
邱さんが昭和57年から59年にかけて
20代、30代の若い人たちに向けて書いたものに
『努力しないで金持ちになる法』という本があります。
私の友人で、この本の題名を聞いて、
「『努力しないで金持ちになる』ってどういう意味ですか」
といぶかしげな顔をした経営者がいますが、
邱さんは『努力』より『工夫』が大事です
という観点からこの本の題名を決められたようです。
さて、ユニークな題名のこの本には
「株式投資はまたとない精神修養の場である」
というこれまた独創的なタイトルの文章があります。
「株式投資が精神修養の場である」ということの意味を
著者にうかがいましょう。
「私に言わせると、
『株の儲けは辛抱料、ガマン料である』
株の上がらない間、
ジッと辛抱するという時間的な忍耐ということがある。
が、それだけではない。
株が上がりはじめて、売りたくなったときに
ジッと売りたい気持ちを抑えて
こらえられるだけの自己抑制力も要求される。
また株がブームになって、
毎日のように株価が上がると、
買いたい一心に駆られる。
下がったら買おうとガマンしていると、
下がらずにもっと上に行く。
ついにこらえきれずにとびつくと、
そこが高値になって、
株価が反落するという目にあわされることがよくある。
こうした株価への挑戦は、やりたいことを抑えたり、
逆にやりたくないことを自分に強制することであるから、
お金儲けをやっているというよりは、
自分との戦いといった方が真相に近い。
そんなことをいうと、
『フ―ン、欲の皮を突っ張らせた話がなにが自分との戦いですか?』
とせせら笑う人があるかもしれないが、
そういう人は、いっぺん株を買ってみるといい。
株式投資がまたとない精神修養の場であることに
気づくにちがいない。
それほど奥行きがあって、
道を極めることの容易でない世界なのである。」
(『努力しないで金もちになる法』昭和59年)
「株式投資はまたとない精神修養の場である」という言葉、
株を買ったことのある人なら、
誰しも思い当たるところがあって、
一度目にしたら、
忘れられなくなるんじゃないでしょうか。
それにしても、この言葉、
株の売買にまつわる人間の複雑な心理を
ものの見事に要約していますね。
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