第469回
「売らずにガマンするようになって一人前」
前に書いたことですが、
私は2回目に2200円で買ったNEC株が
3分の1程度に下がり、
頭を抱えたことがあります。
ずいぶん長い間もち続けたのちに、
やっとこの株がもとの値段にもどったあと
「ヤレヤレ」と云う気持ちになって
その株を売りました。
そうした体験をしていますので、
邱さんが『株は魔術師』に書かれた
次のような文章を読むと、
自分のことが書かれているのではないか、
といった気持ちになってしまいます。
「長い間、自分の買値を割ったままで推移し、
いつも損をしているという脅迫観念につきまとわれてきたので、
『もうこれで自由の身になれたのだ』という開放感があると、
再度この開放感を失うことに恐怖を感じて、
一時も早く足手まといになっているものから
逃れたくなってしまうのである。
そういう状態が3年も続いたことを、
人は『3年もガマンをした』と言う。
その人の心理状態からいえば、
『ガマンをした』ことに
偽りはないかもしれないが、
それは自分の意志でガマンをしたのでなくて、
『損になるから売れなかった』だけのことである。
いってみれば、
牢屋に入れられた者が中に入れられている間
ガマンをしていたもので、
それをガマンでないとはいえないが、
出るに出られなかったので
ガマンをしていたにすぎないのである。」
そう言われると、前科のある身、
二の句がつげられませんが、
そのあとに目の覚めるような快打が飛び出してくるので
邱さんの文章は最後まで読まなければなりません。
「牢屋に入っていたのは刑に服していたのであって、
そういうのをガマンとはいわない。
ガマンとは自分勝手にできる状態になってから、
自分の意志で自分のやりたいことを抑えることをいう。
そういった意味では、自分の買値まで上がって
いつでも売ろうと思えば売れる状態になってから、
売らないでこられることをガマンというのである。
これがなかなか難しいのであって、
したがってガマンできるようになれば、
ようやく一人前になったということができよう」
(『株は魔術師』)
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