| 第449回「証券会社のセールスマンは株の売り買いの仲介人」
 私の知っている人から、株を買ったときの体験談を聞いたことがあります。
 その人は証券会社に出向き、
 店頭で応対してくれた人に向かって
 「このお金が一番ふえる株を買ってください」
 と願いでたそうです。
 この話をきいて、自分だったらそうはしないと思いました。というのも、邱さんが株について書いている文章を読むと、
 必ずといっていいほど
 「証券会社のセールスマンのいうことはきかないこと」
 というアドバイスが織り込まれているからです。
 たとえば、『株の原則』で邱さんは次のようにおっしゃいます。「基本的には、証券会社の人は株のことを知らない、
 と思ったほうがいいのです。
 その点に関しては、昔もいまも、まったく同じ。
 私は、証券界の人は波打ち際にたって海を見ている人だ、
 と思っています。
 今日は波が高いとか低いとか、
 あるいは、天気がいいとか悪いとか、
 それしか見えないんですね。
 一番大切なのは、潮の流れる方向を見ることなんです。
 テーブルの上に立っていたんじゃ、テーブルは見えません。テーブルを押すこともできない。
 株が高いか低いかしか見えないんですね。
 そういう人に『この会社の行方はどうなるか』
 『この業界はどうか』と聞いたって、
 わかるはずがないんです。
 私も最初は証券会社に相談に行ったんですが、
 これはダメと思ってからは、一度も行きません。
 あの人たちは、株の売り買いを手伝ってくれる人であって
 売り買いの意見を述べる人ではない、
 と思うようになりました。
 これは当たり前なんですよ。
 大学を出て、大きな証券会社にはいって、
 そのままカウンターに座った男が、
 翌日から株の講釈ができるわけがないんです。」
 (『株の原則』)
 そういわれると「証券会社の人は自分より株のことに詳しいよ」
 と疑問や反発を感じる人がいるかもしれません。
 そうした人たちに対して邱さんは
 『株が本命』で次のように答えています。
 「はじめて株をやる人は、証券会社のセールスマンは
 毎日毎日、株のことを扱っているのだから、
 株のことは熟知しているものと、
 つい錯覚を起こしてしまう。
 もちろん、証券会社で働いている人の中にも、株価の見通しのきく人が全くいないというわけではない。
 しかし、証券会社のベテランでも、
 株価についてはしょっちゅう見当違いの見通しをする。
 というのも、一つには相場の近くに居すぎて、
 相場の高低を錯覚してしまいがちだからである。
 もう一つには、それぞれの会社に方針があって、
 『次はこの株で行こう』と会議できまると、
 相場とかかわりなく特定の株を
 お客にすすめることになってしまうからである。」
 (『株が本命』)
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