Qさんは、かつて「知恵は借り物でも知恵である」と書きました
そういうことをおっしゃる人の知恵ならいくら借りてもモンクは出ませんね

第361回
明治の日本人に立志の精神を吹き込んだのは『自助論』です

明治時代のことですが、
日本人に「自助」の精神を吹き込み
大きな影響を与えたといわれている本があります。
サミュエル・スマイルズというイギリス人が
「自ら助くる」人たちの実例集をまとめた
『自助論』(セルプ・ヘルプ)で、
この訳書が『西国立志編』として明治4年に出版されています。

この『西国立志編』のことを渡部昇一さんが
著書『ものを考える人考えない人』(平成11年)の中で
次のように紹介しています。
「『自助論』が日本ではじめて
『西国立志編』として訳されたのは
明治維新の時代、富国強兵が叫ばれていたころである。
訳者の中村正直は、幕府の最高学府だった
昌平黌始まって以来の秀才と言われたほど、
漢学のよくできた人だった。

まだ徳川幕府が倒れる前に、
彼はヨーロッパに留学させられ、
当時、先進国の代表だったイギリスに行っている。
当時の日本とイギリスでは、
まさに天と地ほど大きな違いがあった。

中村は『どうしてこんなすごい国ができたのだろう』
といろいろ考えたものの、
ついに理解ができなかった。
そのうち幕府が倒れたため、
中村は帰国することになった。
そして船に乗る直前、
イギリスで知り合いになった友人フリーランドから
贈呈された本がこの『自助論』だった。

彼はこれを読んで非常に感激し、
イギリスが世界に冠たる国である理由が
やっと理解できたのだと言われる。
船の中でほとんど暗記するばかりに読みふけった中村は、
帰国するとすぐ静岡で『西国立志編』の翻訳に取りかかり、
約10ヶ月かけて明治3年10月に訳了、翌年に出版した。

この本は明治初期の人々に大きな影響を及ぼすことになる。
というのも、身分制度が崩壊し、
自分の進路に迷い始めた人々にとって、
『西国立志編』は希望を抱かせる内容だったからだ。
この本にはひとたび志を立て、
好きな道で一芸に秀でれば、
たいていの望みは叶うと書いてある。
封建社会という身分に縛られた時代が終わり、
新しい時代に希望を見出そうとした多くの人が、
これを読んで志の立て方を学んだのである。」
(渡部昇一『ものを考える人考えない人』)

ちなみに、『自助論』については、
中村正直訳の『西国立志編』のほか、
三笠書房から竹内均さんの訳で
『自助論―自分に負けない生き方』が出版されています。


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2003年8月23日(土)

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