第360回
「浮くも沈むも経営者自身が決めることです」
平成7年に出版された
『立て直しの原則』に掲載されている
「当てと銀行は向こうからはずれる」からの3回目の抜粋です。
「人間は総じて経験をもとにしないと
判断のつかないことが多いが、
経験をしたことのないことについて
アドバイスを求められても、
答えられないことが多いのである。
にもかかわらず、人は銀行マンの顔を見ると、
ついアドバイスのひとつも聞きたくなる。
ひとつにはお金を貸す職業柄、
いろんな職業の人とつきあいがあって、
どんな業種が景気がよくて先の見通しが明るいか、
銀行の人ならよく知っているに違いないと
思い込んでいるからであろう。
もうひとつにはお金を貸す人が同意してくれない限り、
資金の調達ができないという現実があるからであろう。
しかし、銀行の支店長も、
あるいは、それ以上の地位にいる人も、
基本的にはサラリーマンだし、
自分の職業を守ることを中心に考えるから、
(1)その人にお金を貸しても大丈夫か
(2)元利の回収は確実にできるか
(3)万一の場合、担保は十分にあるかどうか、
を基準にして可否を判断することになってしまう。
昨今のように産業界が総弱気になっているときは
銀行自体が守勢に立たされているから、
すべてに消極的で公正な判断を期待することは
とりわけ難しいといってよい。
リストラをするにあたっても、
どこまで銀行に打ち明けたらよいか
経営者の判断が必要であろう。
明日にも倒産するかも知れない実情を
うっかり銀行に知られたら、
それこそ貸してくれるお金まで貸してくれなくなって
取り返しがつかないことになってしまう。
だからリストラのための資金が必要になったときも、
銀行に意見を求めるのはよいが、
その意見を聞かないことが大切である。
浮くも沈むも経営者自身が決めることで、
天は自ら助けるものしか
助けてはくれないものだからである。」
(『立て直しの原則』平成7年)
つまり、邱さんは大事なことの判断は
他人(ここでは銀行)に頼らず
自分の頭で考え決定し、行動する方が良いとし、
「天は自ら助くるものを助く」という
「自助の精神」の大切さを述べているのです。
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