第354回
人生後半期の生き方は、前半期の行動で決まります
私は平成6年から平成10年までかけて
邱さんの作品を集めたエッセイ集を編集し、
解説させていただきました。
自分なりに邱さんの作品を集め、
それらに解説を書き、これら一連の原稿を
出版社の人が邱さんのところに持っていきます。
邱さんに出版を認めていただくのが最大の関門ですが
そこを通過すると、
邱さんがすぐに本の「タイトル」を決められます。
そして本の「まえがき」も書かれます。
私は、毎回、本にどんなタイトルをつけていただけるのか、
ワクワクするような気持ちで待ち、
また邱さんがどんな「まえがき」を書かれるのか
大きな楽しみにさせていただきました。
あるとき、私は人生後半期の生き方について
邱さんの作品をまとめさせていただいたことがあります。
そのとき、本のタイトルは『生きざまの探求』と決まりましたが
その「まえがき」の原稿を拝見してビックリしました。
そこには、次のようなことが書かれていたのです。
「時々、同窓会に顔を出してみると、
会社を定年退職した昔のクラスメートが
すっかり老け込んでいるのに
少なからず衝撃を受ける。
どうしてだろうかとよくよく観察して見ると
長い間、与えられた仕事をこなす生活に慣れて、
自ら仕事をつくっていく訓練をしなかったことと
かかわりあいがあるらしい。
同じ会社勤めをしてきた人でも、
自ら先頭に立って仕事をつくってきた人は
定年によって仕事から見放されることはまずない。
職場が変わっても、
次々と仕事をつくっていくことができれば、
年をとってなどおれないからである。
つまり、どんな年のとり方をするかは
年をとってから決まることではなくて、
実は、そのずっと前に決まってしまうということである。
人生80年を二つに分けるとすれば、
人生の後半を決めるのは、前半の40年だろうし、
後半のまた後半を決めるのは後半の前半であろう。
前半の41歳から60歳までを創意工夫で埋めてきた人なら、
あとの20年も同じ姿勢で貫くことができよう。
その意味で男盛りは重要な時期であり、
年をとってからつけ焼き刃で
うまく老後を過ごそうと思っても、
間に合わないのである。
したがって本書は、年をとってから読む本ではない。」
(平成8年『生きざまの探求』)
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