第329回
邱さんの活力の根源は「先読みと実行の精神」
邱さんは若い時から今に至るまで、
「いつも新しいことに取り組む」
という生活を続けておられます。
こうした行動を可能にしているものは
何だろうと考えると、邱さんが面白半分に、
自分につけた“戒名”のことが浮かんできます。
邱さんが58歳から59歳の頃に書いた作品に
『死に方、辞め方、別れ方』
という作品があります。
この著作のなかで邱さんは、
自分は“戒名”など要らないと思っているが、
どうしても必要だというのなら
「先見院力行居士」というのがいいかと書いています。
その部分を引用しましょう。
「戒名は不要である。
戒名にもランクがあって、
高いランクの戒名を得ようとすると、
包み金も莫大になると聞いているが、
それはお寺さんの商売にすぎない。
高いランクの戒名を頂戴したから、
死人としてのランクがあがるわけではない。
人にお金をだまし取られたときほど
無念なことはないと、ふだんから思っている者が、
死んだ途端に、自分の死をダシにして
遺族がお金をむしり取られるのを見るのでは、
それこそ死ぬに死に切れないであろう。
だから、もし戒名がなければ成仏できないのなら、
自分の戒名は自分でつけておきたい。
私の場合は、先見性を発揮することに
無上の喜びを感じて生きてきたのだから、
先見院というのがよいのだろう。
またこれは良いと思うアイデアが浮かぶと、
それを実行に移さなければ気がすまない方だから、
力行居士とでもいうのがふさわしいであろう。
こう書いただけで、自分の戒名は
もう出来上がってしまったようなものだから、
どの字に、どれだけの値打ちがあるか
こだわらなければ、
これで百万円ぐらい節約になったのではあるまいか」
(『死に方、辞め方、別れ方』)
私には、この戒名に記された
邱さんの基本態度が
「いつも新しいことに取り組む」
という行動の源泉になっていると思えるのです。
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