第328回
邱さんはベンチャーの先達です
私が古書検索サイトを開発した
“紫式部”の河野さんを訪ねた日、
私に河野さんを紹介してくださった
二十世紀文庫の門脇さんも同席してくれました。
その日、門脇さんは河野さんに、邱さんの
“40歳では遅すぎる”と“野心家の時間割”を贈りましたが、
河野さんは贈られた本のページを繰りながら、
「ボクも前に邱さんさんの本は10冊ばかり読んでいます。
この本はたしか、前に読んだことがあります」
と“40歳では遅すぎる”の活字をなつかしそうに追いました。
そのあと、河野さんは邱さんの本を10冊ばかり買い集め、
集中的に読まれたようで、
私が1週間ばかりたって再会すると、
河野さんは私に
「邱永漢さんは、昔から事業を起こすことが大事だと
おっしゃっているんですね。
邱さんからは“お金の大先生”というイメージを受けていましたが、
邱さんはベンチャーの大先輩なんですね」
と語ってくれました。
たまたま、河野さんが事務所を構えているビルは
起業家向けに設計されています。
そのため、そのビルの管理に当たっている会社では、
ベンチャーたちを集めて、勉強会を組織していています。
河野さんはこの組織では“古株”のような存在で
私に、その勉強会で話をすることを薦めてくださり、
事務局の人たちと打ち合わせる場を設けてくださいました。
さて、ベンチャーとは「冒険」という意味の言葉です。
「冒険」は危なっかしいところがありますから、
ベンチャーには「危険」という意味も入っています。
そういう人たちに
どういうことを話せば喜ばれるだろうかと考えました。
すぐ頭に浮かんだのは、
私が探究してやまない邱さんは
青年期からいまに至るまで、
「冒険」的な生き方を実践し続けている人です。
「新しいことをするのが好き」という
起業家の精神を持続して活動している人です。
そんな邱さんの話をすればベンチャーの人たちに
楽しんでいただけるのではないか
そう考えて1時間ていど話をすることを引き受けました。
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