| 第323回「3回に1回は新しい店に行くようにしよう」
 昼休みの時間になると、今日はなにを食べようか、どこの店に行こうかと考えます。
 昨日は洋食だったから、
 今日は中華にするかなどと考えて、
 行き先を決めるのですが、
 そのとき頭に浮かべる店はいつも行きなれている店です。
 しかし、慣れ親しんだところにばかり行っていると
 時代遅れになるぞと戒める自分があります。
 『野心家の時間割』に「『行きつけの店』より『未知の店』」
 というタイトルの文章があり、
 そこに盛られている邱さんのアドバイスが
 ときどき私の頭の中で作動するのです。
 そのアドバイスを抜粋させていただきます。
 「私たちには、誰でもいきつけの店があるし、また気に入りの本や
 何回でも行ってみたい旅行先というものがある。
 特にバーやレストランは楽しみに行くところだから、
 馴染みの人たちがいて、こちらの好みも熟知していて、
 お世辞の一つもいってくれる人があれば、
 つい足がそのほうに向かってしまう。
 それはそれで少しもさしつかえないが、バーやレストランが行きつけの店だけに
 固定してしまうと、行動半径がきまってしまい、
 少なくともサービス業の変化からは
 耳や目をふさがれてしまう。
 それは一見、大したことではないと思うかもしれないが、新しい情報や体験から隔絶された状態にほかならない。
 一時が万事その調子で孤立してしまうと、
 固定観念が頭の中で定着してしまう恐れがある。
 だから、飲食店に行く度合いからいって、
 行きつけの店にはなるべく行かないようにしたほうがよい。
 そうはいっても、行きつけということは、居心地がよいとか、
 料理が素晴らしいということであるから、
 全く行かないわけにはいかない。
 したがって2回に1回くらいにとどめて、
 あとの1回は行ったことのない店、
 はじめての店にしてはどうだろうか。
 少し硬化が激しい場合でも、
 せめて3回に1回は新しい店に行くよう
 心がけるのではどうだろうか。
 全く行った事のない店、
 はじめての店にしてはどうだろうか。
 全く行った事のない店に行くと、世間の人がどんな発想で商売をやっているのか、
 どんな商売がいま受けているのか、
 新しい料理の傾向がどうなのか、
 またどんな価格設定が
 いまの人たちのふところ具合にあっているのか、
 いやでもわかってくる。
 たとえ味のまずい店、サービスの駄目な店、値段のデタラメな店であったとしても、
 1回行ってもうたくさんとなれば、
 あとはもう行かなければよいのだから、
 駄目は駄目なりに勉強になるのである。」
 (『野心家の時間割』)
 |