第321回
「寝食を忘れさせるほどの仕事を選ぼう」
時間は客観的、物理的には同じ長さであっても、
主観的、心理的には、短く感じられもすれば、
長くも感じられもするものです。
邱さんは、『野心家の時間割』で
そうした時間に対する感じ方の違いは、
気に入った仕事を選んでいるか、
あるいは気が進まない仕事に従っているかによるので、
長い人生を短く感じるようにするためには
「自分の気に入った仕事に従うようにするのが
いいのではないですか」と書いています。
自分がこれまでとってきたことと
対比させながら読むと、
邱さんの主張が
ずいぶん前向きなものであることに気づきます。
邱さんの提言に耳を傾けましょう。
「よく『仕事が私の恋人です』という人がある。
『仕事が私の道楽です』という人もある。
このことは、世間の大部分の人たちが仕事と趣味を区別して
しかも双方をうまく同時に両立させていることを物語っている。
祝祭日ごとにゴルフに行く人、
外国へ旅行したら必ずオペラをききに行ったり、
美術館めぐりをする人、
ストラディバリのバイオリンを蒐集したり
肉筆浮世絵のコレクションにうつつを抜かしている人等々、
趣味に生きている人は多いが、
これらの人々は趣味とは別に、本職を持っており、
本職と趣味を巧みに両立させている。
『仕事が私の道楽です』という人は、
たまたま仕事のほかに道楽を持たない人か、
仕事に熱中するあまり、
ほかの道楽に手がまわりかねている人であるが、
それだからといって、
他に趣味や道楽を持った人は仕事に熱心でないとか、
集中力が分散されているということはない。
世の中には、仕事に情熱を傾ける人と、
全く傾けない人の二種類があるだけで、
その差は好きな仕事に従事しているかどうかであろう。
もし好きな仕事に従事しているだけなら、
恋人と一緒にいるようなものだから、
時間のたつのはすぐ忘れてしまう。
いまでも『気がついたら、もう朝になっていた』
といった仕事ぶりの人を時々見かけるが、
こういう人は時間の使い方の上手な人である
といってよいだろう。
したがって本当に上手な時間の使い方がしたかったら
好きな仕事を探すことであろう。」
(『野心家の時間割』)
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