第315回
心理的に充実した時間の使い方を追求した『野心家の時間割』
“二十世紀文庫”の門脇さんは、
私を“紫式部”の河野さんに紹介してくれたとき、
河野さんに邱さんの本を2冊おくりました。
1冊が『四十歳からでは遅すぎる』でした。
この本は単行本として出版されたときのタイトルが
『企業家誕生』で、文庫本が出されたとき、
『四十歳からでは遅すぎる』に改題されました。
ここしばらく、この本の主題になっている
“独立自営”をテーマにする邱さんの文章を抜粋してきましたが、
門脇さんが河野さんに送ったもう1冊の本が
『野心家の時間割』でした。
この『野心家の時間割』もずいぶん多くの人に読まれたようですが、
この本にはどんなことが書かれているかは
「まえがき」に詳しく紹介されています。
「『時間』について書かれた本がアメリカにはたくさんある。
期待して読んでみたが、
どうすれば会議の時間を短縮できるか、
どうすればファイルの整理を能率的にやれるか、とかいった
事務、能率にウエイトをおいた内容のものばかりであった。
能率を重んじるアメリカ人にとっては、
もっともなことであるが、どうも食い足りない。
『お金』と『時間』は私たちが人生を生きるうえで
最も重要な二大ファクターである。
『タイム・イズ・マネー』というように互換関係にもある。
しかし、私たちの周囲を見ていると、
お金に関心を持ち、お金を大事にする人々でも、
時間に対しては無駄遣いをする人が案外多い。
時間は誰でも持っていて、使っても使わなくても
同じようになくなってしまうので、
うっかり過ごしてしまったり、
最初から手を負えないと
あきらめてしまうかもしれない。
私は25年間も『お金』の話を書いてきて、
本当のところ、『お金』の話には少々、食傷気味だし、
『お金』と同じくらい『時間』の重要性を認めているので、
一ぺんは『時間』の使い方について書いてみたいと思っていた。
ちょうど、『ビッグマン』誌がスペースを提供してくれたので、
『野心家の時間割』と題して、
昭和58年8月号から昭和59年7月号まで
野望に燃えた現代青年たちに必要なタイム・テープについての
私の考え方を述べた。
『時間』には物理的、客観的な時間もあるが、
もう一つ心理的、主観的な時間というものがある。
物理的に長い時間を生きることだけが人生ではなくて、
物理的に長い時間も短く感ずるような、
力のこもった生き方をするのが
素晴らしい人生であると私は思っている。
もし私がいくらかでも皆さんに
ヒントを提供することができたとしたら、
それはアメリカ人のような物理的な能力主義ではなくて、
心理的に充実した時間の使い方についてではないかと思う。」
(『野心家の時間割』)
|