第314回
「中年以降の仕事選びには奥さんや親しい友人の意見を参考に」
邱さんの『生き方の原則』を読むと
「第二の人生での仕事選びでは
自分がその仕事が好きであるということが最低の条件」
と書かれていましたが、同時に年をとると、
「お客様が相手にしなくなるということを
念頭においておかねばならない」
ということも書かれています。
前から気になっていたことですが、、
邱さんはどんな意見を示されているのでしょう。
「忘れてならないのは、年をとると
だんだん世間が相手にしてくれなくなるということです。
たとえば、長いあいだ建設会社で設計の仕事をしていたので、
定年後もそれをつづけようとしても、
70歳近い人に最新型のビルの設計を依頼する人はいません。
モノを売るセールスマンにしても同じです。
会社でセールスの仕事をしていたからといって、
定年後にセールスの仕事をしても、
そうそう成功するものではありません。
買う側の立場にしてみれば、
お年寄りのセールスマンより
若い子のセールス・レディを選んでしまうのは自然なことです。
このことは、本人の能力とか知識と
まったく関係のないことです。
年をとると、世間がそういう目で
年寄りを見るということです。
したがって、年寄りを受け入れてくれる世界が
自ずから狭くなり、
若いときのようにはいかなくなるのです。
そういった意味で、第二の人生を歩むために、
思い切って発展途上国へ出て、
同じ分野で技術指導をするのも一つの道です。
ただ長いあいだ、大きな企業の中の一つの部署で、
それこそ歯車の一つとして動いていた人間が、
定年になったからといって
俄かに経営者として
独立自営をしようとしてもうまくいきません。
サラリーをもらってあたえられた仕事だからです。
人にはそれぞれ自分の分に応じた仕事があるもので、
参謀のつとまる人が将軍にはなれるとは限らないし、
職人肌の人に店主はつとまらないというのが普通です。
しかし、人間は誰にも自惚れというものがありますから、
自分にそれだけの能力がないとは思いたくないものです。
そういう人は奥さんとか、
親しい友人の判断を仰ぐのも一つの方法です。
近くにいる人は、ふだん口にはださなくとも、
案外、よくものを見ているものです。
定年後の失敗は体にこたえますから、
失敗するわけにはいかないのです」
(『生き方の原則』平成8年)
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