| 第306回「小資本で出発できない事業は独立自営に向きません」
 邱さんによると、自分が選んだ事業をモノにするには
 選んだ事業が時流にうまく合っており、
 また自分の性格や能力にも合っていることが必要とのことですが、
 必要とされる条件はこれらにとどまるものではないようです。
 邱さんの起業話の続きに耳を傾けましょう。
 「その人の手に合う合わないは能力の問題でもあるが、同時に資力ともかかわりがある。
 たいしてお金を持たない者、
 あるいは資金調達能力のない者が
 いきなり身分不相応に
 莫大な資金を要する仕事に手を出しても、
 成功は覚つかない。
 つまり、スタートするにあたって、
 小資本で出発できない事業は
 独立自営には向かないということであり、
 したがって大資本を要する種類の事業会社に就職したら、
 サラリーマン脱出はほとんど不可能に近いということでもある。
 たとえば、鉄鋼業とか、造船業とか、自動車メーカーに就職すると、会社にいて覚えたことが脱サラのあと、ほとんど役に立たない。
 まさか自分でお金を集めてきて、製鉄工場や、
 造船所や自動車工場をはじめることはできないであろう。」
 (『四十歳からでは遅すぎる』)
 確かに邱さんのおっしゃるとおりで私はたまたま製鉄会社で仕事をしてきましたが、
 同じ時期に入社した人たちのうち、
 独立自営の道にふみだした人は限られているのですが、
 職種をみると、コンサルタント、研修講師、
 弁護士といったところで、どれもこれも
 少ないお金で開業できる商売ばかりです。
 さて、邱さんの続きの言葉に耳を傾けましょう。
 「銀行や証券会社のような金融機関についても同じことがいえる。銀行業務や証券業務を一通り覚えたあと、
 3人5人友達で出資して、
 小さな銀行か証券会社をはじめようか
 というわけにはいかないものである。
 銀行を辞めてほかの道を歩むようになった人を見ると、
 自分で新しい事業を興す人は皆無に近く、
 たいていは創業者社長に請われて
 財務担当者として会社入りし、
 のちに昇進して社長になったとか、
 ピンチに陥った事業会社の立て直しのために
 横すべり天下りをして成功した人々である。
 銀行で覚えたことが役に立っているとすれば、金ぐりとか、経営一般に対する知識とか経験であり、
 銀行を辞めてからあとの成功は
 本人の資質と努力からきたものである。
 だからサラリーマンとして覚えたことがそのまま役に立たず、
 もう一ぺんゼロからスタートするとなると、
 事業会社で仕事を覚えて、同じことを応用して
 その延長戦上で再出発をする人より、
 ずっと不利なハンディを背負ってスタートすることになる」
 (同上)
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