第305回
「好きでまた才能があることが事業成功の不可欠の条件です」
私が大学の教養学部の過程を終え、
経済学部の学生になったのは、
昭和38年のことで、いまから思えば
日本が高度成長への道を走りだしたころのことでした。
その頃、経済学の本を買って読むと、
経済が発達すると、農業や漁業といった産業より、
工業のウエイトが高くなると書かれていて、
そのことは十分納得できることでした。
が、欧米では経済が日本よりうんと発展していて、
工業よりサービス業の比重が高くなっており
やがて日本でもそうなるのだと書かれていて、
そんなものかなあと思ったものでした。
それから40年近い年月がたち、物づくりより、
サービス業のウエイトが高くなっている経済を
実感するような時代になっていますが、
私たちに必要なのはこういう時代環境のなかで、
どういう経済生活を送っていくかということでしょうね。
邱さんの起業話をききましょう。
「脱工業化のあとはサービス業の時代といわれているが、
サービス業なら何でも成功できるというわけではない。
それどころか、新しいサービス業の出現によって
古くからあったサービス業は脅威を受ける。
したがって同じサービス業に従事していても
『サービス業は斜陽産業だ』と実感している人もいれば
『いや、サービス業こそ成長産業だ』と元気一杯の人もいる。
世の中が豊かになると、
外で食事をしたり、酒を飲みに行ったり、
あるいは旅行にでかけるチャンスがふえる。
男も女も自分の仕事を持つようになって、
家事労働に従事する機会が減ると、
その分だけサービス業に陽が当たるようになる。
しかし、それをどういう角度からとらえ、
どういう対応の仕事をするかによって、
一つの事業を儲かる商売に仕上げることもできれば、
損をして店じまいにまで追い込まれてしまうことにもなる。
『好きこそ物の上手なれ』と昔からいわれているが、
自分の好きな仕事であれば、
寝食を忘れて打ち込むこともできるし、
創意工夫にも力が入る。
しかし、いくら好きなことであっても
『下手の横好き』ともいわれるように、
才能の乏しい者は成功できない。
個人の才能を要求される分野において同じことがいえる。」
(『四十歳からでは遅すぎる』)
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