第301回
「お金を儲けるうえでお金があるかどうかは関係ありません」
私が新日鐵の八幡製鉄所に開設された
事業開発推進部というところに赴任したころの話ですが、
その部署には製鉄所の技術部門や管理部門をはなれて、
新規の事業の企画を担当するようになった人たちが
集まっていました。
新しい肩書きは
“新規事業企画スタッフ”ですからかわされる話も
“お金儲け”に連なることになっていましたが、
私のそばであるスタッフが
「あそこの店は儲かっているね。なにしろお金があるから」
と話しているのが聞こえてきました。
お金を儲けるのは難しいものですから、
私たちはとかくこういう見方をしがちですが、
次に引用した邱さんの文章を読めば、
それが的外れな議論であることがわかります。
「お金がない人ほど、他人がお金を儲けているのを見ると、
『あの人はお金を持っているから儲かるのは当たりまえ』とか
『オレは資本を持っていないからだダメなんだ』
と弁解めいた口をきく。
なるほどお金がなければやりたいこともやれないのだから、
何をやるにもある程度の資本は必要だが、
資本さえあれば何事も
スイスイとうまくいくわけではない。
無一文から出発して
立志伝中の人になった例はいくらでもある。
試みにそういう人に、
『お金を持っていないと、お金は儲からないものですか?』
ときいてみるといい。
おそらく10人のうち10人が
『そんなことはありませんよ。
お金のない人はお金を持っている人にくらべれば、
余計な苦労をさせられますが、
お金が儲かるかどうかを決定するのはお金ではありません』
と否定するに違いない。
お金が儲かるとか、事業がうまく成功するとかは、
資本にするお金がたっぷりあるかどうかとは
あまり関係がないのである。
では何と関係があるかというと、
大雑把な言い方をすれば、
まず第一は自分の選んだ事業が
時流にうまく合ったものであるかどうかであり、
次は選んだ事業が自分の性格や能力に
ぴったりしているかどうかであろう。」
(『四十歳からでは遅すぎる』)
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