第282回
「邱さんの昔の本が読まれているようです」
邱さんの作品を愛好されるネットの古書店主、
門脇さんと私の間で
頻繁にメールを交わすようなことになりましたが、
門脇さんから自分の店で
邱さんの直木賞作品が売れたことを知らせてくれました。
「戸田様。
昨日、邱永漢著『香港・濁水渓』
(直木賞 初版 中公文庫)が売れました。
“二十世紀文庫”として4冊目です。
未だ開店1年半の二十世紀文庫という小さな店としては、
ベストセラーの方です。
直木賞のこの本が何で今更売れるのか、
よくわかりません。
戸田さんはどう思いますか?
こうなると、以前に8巻本の
邱永漢著「西遊記」(中公文庫)を
安い値段で売ったことが惜しい気がします。
この本は、中々、揃いがまとまらず、
今はバラで売っていますが、
バラでは多分売れないでしょう」
門脇さんから
「なぜいま邱さんの本が売れるのか」ときかれ、
「門脇さん、決まってるじゃないですか。
ボクが邱永漢作品の解説を続けているからですよ」
と書きたい衝動におそわれました。
しかし、それでは自己顕示欲マルダシで
文章に気品がなくなってしまいます。
私はそんな気持ちを抑えて
できるだけソフトな表現で返事を書きました。
「門脇様
『香港・濁水渓』が売れたそうでおめでとうございます。
わたしは、現在、邱さんのホーム・ページで
『Qさんライブラリ』といって
邱永漢氏作品を紹介するコーナーを担当しています。
連載はすでに200回を超えていますが、
先だって、『子育てはお金の教育から』
という本を紹介したところ
ある一児の奥さんから、この本を読みたくなったので、
探してほしいと頼まれ門脇さんが活用されている
古書検索サイト『スーパー源氏』で検索し、
たまたま大阪の本屋さんに一冊あることを知りましたので、
その方に知らせ、奥さんは
その本屋さんから『子育てはお金の教育から』を
買われることになりました。
面白い体験でしたので、私はこのときの体験を
『お知恵拝借』というコーナーで書かせていただきました。」
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